2019年度皮膚科専門医試験　第44問　ケジラミ症【駆虫剤フェノトリン・ジメチコンも解説】

　なんとも見た目がよろしくない感じがしますが、出題される以上、対策するしかありません。

　 日皮会誌の2019年のセミナリウムによると、

　ケジラミとトコジラミは見た目で見分けられますが、アタマジラミとコロモジラミは見た目では見分けられません。

　「○○ジラミ」の問題は2013年度以降だと2016年度の第27問にトコジラミが出題されています。

　日皮会誌のセミナリウムでは、2019年のセミナリウム（日本皮膚科学会雑誌 129.12 (2019): 2513-2517.）で「アタマジラミ」を中心に解説されています。

　また駆虫剤は医療用医薬品というより一般用医薬品・医薬部外品が中心となるので診療をしているだけではとっつきにくい分野です。

　駆虫剤は2021年にジメチコンが新規成分として国内初承認されており今後いつ出題されてもおかしくありません。

　この記事ではセミナリウムとUpToDateを踏まえて皮膚科専門医試験での「○○ジラミ」と駆虫剤について解説しています。

第44問　ケジラミ症【解答：3】

　トコジラミは南京虫ともいわれますが、厳密にはシラミではなくカメムシの仲間です。

　アタマジラミ・コロモジラミ・ケジラミは「シラミ」、トコジラミは「カメムシ」と覚えましょう。

　違いを中心にまとめてみました。

	アタマジラミ	コロモジラミ	ケジラミ	トコジラミ
種	シラミ目	シラミ目	シラミ目	カメムシ目
大きさ	2-4mm	2-4mm	1-2mm	5-8mm
リスク	子供 （社会経済的 背景関係なし）	不潔な環境 貧困 ホームレス	性行為	温帯～熱帯 不潔な環境 貧困 宿泊施設
寄生部位 （虫卵）	頭髪	衣服	睫毛 腋毛 陰毛 （頭髪以外 の硬毛）	寝具
年齢	子供	不問	若年成人	不問
物理的治療	梳き櫛	衣服の熱洗浄 ドライクリーニング	物理的除去	駆除
本邦 承認治療	ピレスロイド系 ジメチコン製剤	ピレスロイド系 ステロイド外用	ピレスロイド系	ステロイド 外用
本邦 未承認治療	イベルメクチン ベンジルアルコール	ピレスロイド系 （クリーム） イベルメクチン	イベルメクチン	記載なし
再治療	9日目	記載なし	7-10日後	記載なし
駆除	駆虫剤	駆虫剤	駆虫剤	熱処理 燻煙剤無効
ピレスロイド 抵抗性	多い	あり	ほぼなし	あり
媒介する感染症	なし	発疹チフス 回帰熱 塹壕熱	なし	なし

　治療の駆虫剤については次の項で解説します。

　2016年のトコジラミに関する出題では「燻煙剤が無効である」という選択肢がありました。2012年の論文ではトコジラミがいるような狭いところまでは燻煙剤が広がらないため効かないのではないかという報告がされています。（ただし2021年8月に承認されたブラフラニリドの燻煙剤は有効という見解もあります。https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21496.html）　

　感染症を媒介するのは基本的にコロモジラミのみという点も大切かも知れません。

　あとは、見た目の写真が出題されていますので、やむを得ないですが確認しておきます。ケジラミは横幅もあります。

　図の印象とは違って、ケジラミはアタマジラミやコロモジラミと比べて小さいという点は知っておく方がよいかもしれません。

　あまり見たくありませんが、厚生労働省の資料では、トコジラミも含められていました。

　繰り返しますが、トコジラミはシラミではなくカメムシです。

駆虫剤フェノトリン・ジメチコンとは？【一般用医薬品・医薬部外品】

　日本でヒトに対して使用できる駆虫剤は基本的にフェノトリンとジメチコンの2種のみです。（忌避剤は次の第45問で解説します）

　比較してみます。（医療用医薬品のフェノトリンは疥癬の項目で解説します。）

	フェノトリン	ジメチコン
分類	一般用医薬品 （第2類医薬品）	医薬部外品
承認	1981年	2021年
濃度	0.4%	4%
効能効果	シラミの駆除	アタマジラミの駆除
商品	スミスリンシャンプー® アースシラミとりシャンプーα®など	アースシラミとりローション®
作用機序	ピレスロイド系 Naチャネル阻害	虫体の気門や気管を閉塞
虫卵への効果	なし	あり
用量用法	頭髪：10-20ml 陰毛：3-5ml 濡らした髪を3-5分シャンプー 5分放置し流す 1日1回2日おきに3-4回	1回25-50mlを乾いた髪に塗布 5分放置しシャンプーで流す 1日1回2-3日おきに3回

　近年問題となっていたアタマジラミのピレスロイド抵抗性に対する治療薬（医薬部外品）として2021年にジメチコンが承認されました。

　2019年のセミナリウムではジメチコンの承認を次のように待ち望んでいました。

治療に困った患者家族が自己判断により，日本では未承認の海外製ジメチコン製剤（LiceMDⓇ）をネット通販で購入し使用している例もあり，早急な整備が望まれる．

日皮会誌：129（12），2513-2517，2019

　これはいつか専門医試験に出ますよね。これだけプッシュして出ない方がおかしい。

参考文献

　いかがでしたでしょうか。

　医療用医薬品以外の分野になると病院で扱うことが少なくなるのでとっつきにくいですが、セミナリウムでジメチコンの承認が待ち望まれていたように皮膚科専門医にとっては一般用医薬品・医薬部外品も理解しておくべきなのでしょう。

　少しでもこの記事がみなさまの勉強の助けになれば幸いです。

最後に、こんな風に考えたら答えがかわるかもしれない、というご意見がありましたら、
ぜひコメント・ご意見いただけると嬉しいです。

←前問題　2019年度　第43問
ハンセン病【多菌型の症状は左右対称性】　

次問題　2019年度皮膚科専門医試験　第45問
ダニ媒介性感染症【忌避剤（ディート・イカリジン）も解説→

他の問題についてもこちらでまとめています。