皮膚生検の算定は?【蛍光抗体や免疫染色の保険算定も解説】

皮膚科の保険算定

 皮膚生検は、皮膚科診療の醍醐味のひとつである「皮膚病理」につながる検査です。

 「病理検査」は、検体に「どのような細胞がいるのか」、「細胞同士がどのような関係になっているのか」を見る検査で「がん」を含めた多くの病気の診断に大切です。

 大切なだけに、ほかの皮膚科の検査・処置と比べて保険点数も高くなっています。

 クリニックでおこなわれることは少ないですが、病院ではしばしばおこなわれます。

 患者さんから費用のことを聞かれる場合もあるので、できればその算定についても理解できているほうがいいですよね。

  • 皮膚生検ってなにで算定するの?
  • 病理検査ってなに?算定はどうするの?
  • 蛍光抗体や免疫染色をするときには何で算定するの?
  • 蛍光抗体の保険適応がある病名は?
  • 「4種類以上」加算ってなに?

 といった疑問をおもちのかたへ!

 この記事では、皮膚生検と病理検査の保険算定について説明しています。

皮膚生検の算定は?【皮膚生検と病理検査は1セットです】

皮膚生検の算定は?
1D417 組織試験採取、切採法
 1 皮膚(皮下、筋膜、腱及び腱鞘を含む。)
500点
2N000 病理組織標本作製
 1 組織切片によるもの(1臓器につき)
860点
3N002 免疫染色(免疫抗体法)病理組織標本作製
 8 その他(1臓器につき)
 「4種類以上」加算

400点
1200点
4N006 病理診断料
 1 組織診断料
520点

 皮膚生検をおこなって算定できる項目は表のように4種類あります。

 3の免疫染色はおこなわないこともありますが、そのほかの3つはかならず行われます。

 合計すると1880点-3490点で算定できる点数は大きいです。その分患者さんに説明が必要ですね。(3割負担で5000-10000円程度)

 「皮膚生検」という検査自体は、「皮膚を麻酔してメスなどで切り取る」ものです。けれど、切り取ったものをそのまま顕微鏡でみても全く意味がありません。

 「皮膚生検」は、切り取った皮膚を加工して顕微鏡でみる「病理検査」と必ずセットで行われます。

 4種類の算定項目を見ていく前に、皮膚生検後にどのような過程で病理検査がされるのか、みておきます。

  <皮膚生検から病理検査までの流れ>
皮膚生検 皮膚から検体を切りとる
病理組織標本作製 検体を保存液につける(固定)
検体を薄く削りとる(薄切)
細胞を区別するために色をつける(染色)
病理診断 標本を顕微鏡でみる

 検査は、「皮膚生検」→「病理組織標本作製」→「病理診断」の流れですすみ、それぞれについて保険算定をおこなうことになります。

 「病理組織標本作製」・「病理診断」は、病理検査の依頼時に自動的に算定される病院もあるので各病院で算定方法について確認しておくのがよいと思います。

 それぞれの項目について注意事項を確認します。

皮膚生検

D417 組織試験採取、切採法
 1 皮膚(皮下、筋膜、腱及び腱鞘を含む。)
500点

 算定での注意点は4つです。

  1. 消毒薬や麻酔薬など使用した薬剤は通常算定可(DPC包括入院では検査料のみ算定可能で薬剤は算定不可)
  2. 6歳未満では乳幼児加算(100点)を算定可
  3. 部位ごとに算定可(近い部位の場合には2か所生検をしても1部位と数えます)
  4. 手術料とは併算定不可(手術で切り取った検体については算定できません)

病理標本作製

N000 病理組織標本作製
 1 組織切片によるもの(1臓器につき)
860点
N002 免疫染色(免疫抗体法)病理組織標本作製
 8 その他(1臓器につき)
 「4種類以上」加算

400点
1200点

 病理組織標本作製は、皮膚生検でとった検体の加工することで、皮膚生検での算定項目は2種類です。

 また、院内に作製設備がなく衛生検査所などに委託した場合でも算定することができます

 通常は、「N000 病理組織標本作製」のみを算定します。

 通常の検査だけでは診断が難しい場合には、「N002 免疫染色(免疫抗体法)病理組織標本作製」をおこない追加で算定できます。

 「免疫染色」とは、「検体の細胞にどのような物質があるのか」を調べるものです。

 免疫染色を検査に使用することで細胞の特徴をより詳しく知ることができます。

 病理組織標本作製の算定上の注意点は次の4点です。

  1. 病理組織標本作製の2項目(N000の1とN002の8)は併算定可
  2. 皮膚の部位ごとの算定は不可
  3. 軟部腫瘍、皮膚の血管炎、水疱症(天疱瘡、類天疱瘡等)、悪性黒色腫」の確定診断のために4種類以上の免疫染色をした場合には1200点の「4種類以上」加算を算定可
  4. DPC包括入院では2種類とも算定不可

 1200点の「4種類以上」加算は病理診断依頼時に自動算定されない場合もありますので各病院での算定方法について確認しておくことがおすすめです。

 この「4種類以上」加算については、蛍光抗体(免疫染色の一種)を用いた検査の際に大切なので後述します。

病理診断

N006 病理診断料
 1 組織診断料
520点

 病理診断は、作製した標本を顕微鏡でみて診断するときに算定します。

 連携した医療機関に病理診断を外注する場合でも、算定可能となっているので皮膚生検をする医療機関に病理診断を専門とする医師がいなくても算定可能です。

 注意点は次の3点です。

  1. 病理診断の専門の医師がいる医療機関(連携した外注先の医療機関にいればOK)でのみ算定可
  2. 診断の回数に関係なく月1回のみ算定可能(他の生検で算定している場合には算定不可)
  3. 基準を満たす施設で、文書で結果報告した場合には病理診断管理加算(120点 or 320点)を算定可(点数は施設による)
  4. DPC包括でも算定可

蛍光抗体直接法の算定【水疱症や皮膚血管炎の検査に必須】

蛍光抗体直接法の算定【水疱症や皮膚血管炎の検査に必須】

 蛍光抗体の検査は、皮膚科や腎臓内科など特定の科で主に使用される免疫染色の一種です。

 専門的に言うと蛍光抗体の検査は直接法と間接法にわかれ、病理検査で保険算定するのは「蛍光抗体直接法」です。

 ほとんどの場合、IgA,IgG,IgM,C3の4種類の蛍光抗体直接法が用いられます。

 算定項目は、N002 免疫染色(免疫抗体法)病理組織標本作製8 その他(1臓器につき)」と「4種類以上」加算の1600点で、皮膚科では皮膚の血管炎、水疱症(天疱瘡、類天疱瘡等)の診断目的に平成24年度より保険適用となっています。

 一般の医療機関では蛍光抗体の検査をおこなう設備がないので、SRLなどの検査会社に外注することが一般的です。(SRLなら「抗表皮自己抗体 直接法」の項目)

 天疱瘡や類天疱瘡などの「水疱症」は難病にも指定されていて、蛍光抗体の検査は、難病の認定に必要となる場合があります。
 難病外来指導管理料の算定【難病でも算定には条件があります】

まとめ

まとめ

 いかがでしたか?

 要点をまとめておきます。

工程項目DPC包括
での算定
算定
回数制限
部位ごと
の算定
皮膚生検D417 組織試験採取、切採法
 1 皮膚(皮下、筋膜、腱及び腱鞘を含む。)
なし
病理組織
標本作製
N000 病理組織標本作製
 1 組織切片によるもの(1臓器につき)
×なし×
病理組織
標本作製
N002 免疫染色(免疫抗体法)病理組織標本作製
 8 その他(1臓器につき)
 「4種類以上」加算
×なし×
病理診断N006 病理診断料
 1 組織診断料
月1回×
  • DPC包括で算定できるのは「皮膚生検」と「病理診断」のみ
  • 「病理組織標本作製」の2項目はDPC包括では算定不可
  • 免疫染色の「4種類以上」加算は、「軟部腫瘍、皮膚の血管炎、水疱症(天疱瘡、類天疱瘡等)、悪性黒色腫」のみ算定可
  • 蛍光抗体直接法は、「皮膚の血管炎、水疱症」の病名で「4種類以上」加算として算定可

そのほか皮膚科の保険算定についてはこちらでまとめています。

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