2021年度皮膚科専門医試験の傾向【医療費・GVHDが登場】

2021年度皮膚科専門医試験

 選択問題100問、記述問題20問(2時間半)の出題で、合格率は82.7%でした。

 2021年度は面接が廃止されて3年目。

 2019年度・2020年度と同様の選択問題・記述問題の出題数となりました。

筆記試験は選択問題が100問、記述問題が20問です。平均識別値は選択が0.268、記述が0.436であり記述問題の識別値が高い傾向です。合格者は、病名などのスペルを正しく書け、大きく差が付くポイントになっています。記述問題を増やしたいところですが、採点を楽にする工夫が必要です。
※識別値・・・受験者の実力を測るのに適しているかを表す指数

JDA Letter 2022-Jan 「令和3年度皮膚科専門医認定試験の概況と傾向分析」 専門医試験委員会委員長 田中 勝 先生

 2020年度の講評と同様、記述問題の重要性が示唆されており、今後記述問題が増える可能性もありそうです。また、対策が難しいですが略語のスペルアウトは今後も出題されるようです。

 出題分野について検討すると、出題分野ベスト40からは38問(表の太字番号)の出題がありました。

選択問題【太字の番号は出題分野ベスト40】

番号内容番号内容
1汗腺の解剖生理51腫瘍随伴性天疱瘡?
2続発性無汗症の原因52DPP4阻害薬関連類天疱瘡
3特発性後天性全身性無汗症の重症度分類53組織球増殖性疾患と表面マーカー
4特発性後天性全身性無汗症の診断基準54サルコイドーシスor
多中心性細網組織球症
5毛包の解剖生理55脱色素斑がない色素異常症
6瘢痕性脱毛56Hermansky-Pudlak症候群
7慢性光線性皮膚炎57まだら症
8日光角化症に対する
イミキモドの用法用量
58壊疽性膿皮症の適応追加薬剤
9UVAによる光老化59ベーチェット病
10フィラグリンと分解産物60膿瘍性穿掘性頭部毛包周囲炎
11ケラチンの構造61GVHD
12ケラチンの発現部位62エピペンの使いかた
13表皮融解性魚鱗癬63OAS
14接触皮膚炎の病態64遺伝性血管性浮腫の発作出現時の治療
15肥満細胞65血管性浮腫発作時の救急対応
16ランゲルハンス細胞の表面マーカー66成人発症の食物アレルギー
17デュピルマブの作用機序
(サイトカイン)
67アレルギーコンポーネントの特徴
18葉状魚鱗癬の遺伝子変異68LEOPARD症候群
19Darier病69PTEN遺伝子変異によって生じる疾患
20角化異常症と原因分子70弾性線維性仮性黄色腫
21顆粒変性を起こす角化異常症71ダリエー病とヘイリーヘイリー病
22ジベルバラ色粃糠疹72ペラグラ
23CARD14遺伝子変異毛孔性紅色粃糠疹73Fabry病/神崎病
24妊娠中内服可能な乾癬の内服薬74ステロイド骨粗鬆症
25デルゴシチニブ軟膏の用法用量作用機序75無・低汗性外胚葉形成不全症
26接触皮膚炎76先天性皮膚欠損症
27ステロイドの使いかた77神経線維腫症
28バリシチニブの作用機序78メラノサイトが増えない色素斑
29一次刺激性接触皮膚炎79疥癬の治療薬
30マダニが媒介するウイルス80fibrillar pattern
31多形紅斑様皮疹をともなう手足口病81lattice like pattern
32爪白癬治療の薬価82扁平苔癬のウィッカム線条
に相当する組織所見
33爪白癬の病型83後天性血友病A
34皮膚カンジダ症に
保険適用のある抗真菌薬
84アザチオプリンとNUDT15遺伝子多型
35培養できない抗酸菌85メラノサイト系病変の9 pathways
36LRINECスコア86Glomus腫瘍のマーカー
37スポロトリコーシス87Warty dyskeratoma
38結核88LPLK
39蚊刺過敏症89mixed tumor of the skin
40線状皮膚炎90皮膚の発生
41ヒアリ91セリンプロテアーゼインヒビター
の先天異常
42ツツガムシ病と日本紅斑熱92日本人ノーベル賞
43梅毒の検査93感染症の出席停止
44HIV感染症94医療安全
45菌が検出される第2期梅毒95皮下結節性脂肪壊死症
46ヒドロキシクロロキンの用法用量96免疫組織化学染色の前処理
47全身性強皮症の疫学と症状97神経終末器官の種類と機能
48全身性強皮症の
total skin thickness score
98ジントニックの固定薬疹
49血管肉腫の疫学と症状99ウイルスの基本再生産数
50BPDAI100高額療養費制度

 頻出問題のなかでも以下の出題は3年連続以上連続となりました。

4年以上連続出題
「ケラチン」・「アトピー性皮膚炎」
「乾癬」・「弾性線維性仮性黄色腫」・「悪性黒色腫」
「帯状疱疹」・「HIV」・「壊死性筋膜炎」
「抗真菌薬」・「結核」・「梅毒」・「疥癬」
「食物アレルギー」・「保険診療」

3年連続出題
「紫外線の特徴」・「特発性後天性全身性無汗症」

 また2020年度に出題のなかった「サルコイドーシス」は予想どおり復活しました。

 一方、近年連続で出題されていた「色素性乾皮症」「環状肉芽腫」「AGA」「ざ瘡」の出題はありませんでした。この4分野は2022年度の出題の可能性が高いとみてよいかもしれません。

 頻出問題の「壊死性遊走性紅斑」「SJS/TEN」「電子顕微鏡」の出題もありませんでしたので要チェックです。

 近年3年間をみてみると、新しい傾向も見えてきています。

 ここ3年で2問以上出題されている新傾向の出題分野は次の通りで2022年度も連続して出題される可能性があると思います。

【ここ3年で3問出題
「接触皮膚炎」・「LE」・「ダリエー病」
「EBV」・「ハンセン病」「マダニ」

【ここ3年で2問出題
「肥満細胞」・「血管性浮腫」
「まだら症」・「無汗性外胚葉性形成異常症」

 「接触皮膚炎」は2020年にガイドラインがアップデートされたことを受けて出題頻度が上がっているように思われます。

 膠原病の出題は少ない傾向がつづいていましたが「皮膚筋炎」「全身性強皮症」「LE」を中心に出題が強化されています。

 「血管性浮腫」は「遺伝性血管性浮腫」の治療薬が次々上市され今後の出題が予想されます。

遺伝性血管性浮腫の新薬
急性発作:ブラジキニン受容体阻害薬「イカチバント」(2018年11月)
急性発作の発症抑制:カリクレイン阻害剤「ベロトラルスタット」(2021年4月)

 2021年度はこれまで全くといって出題されていなかった分野の出題もありました。

「GVHD」・「血友病」

の2分野ですが、今後これらの出題が増えてくるのかは不明です。

 そのほか、32番や100番は医療費の細かい薬価や制度が問われており、普段から保険点数・薬価について意識していないと回答はむずかしいかもしれません。(100番は意識していても難しいと思います。JDA Letterによると正答率10%だったとのことです。)

 82番は「扁平苔癬のダーモスコピー像のウィッカム線条」に相当する病理所見(顆粒層の楔状肥厚)を問う出題でしたが、正解率19%と低かったことが講評でコメントされていました。

記述問題【太字の番号は出題分野ベスト40】

番号内容番号内容
1角質細胞間脂質11Immune related adverse events
2顔面毛包性紅斑黒皮症(北村)12回転皮弁
3帯状疱疹の治療薬の一般名3つ13リンパ腫関連のEBウイルス
4性感染症STIのフルスペル14BRAF/MEK阻害薬の一般名
5白血球破砕性血管炎15自己免疫性プロゲステロン皮膚炎
6TIF1γ抗体16爪下外骨腫
7Baxter法17血管脂肪腫
8ABIのフルスペル18Pagetoid spread
9ラパリムスゲル19遺伝子変異の表記
10色素性痒疹20透析アミロイドーシスの沈着物質

 ABIのフルスペルは2016年度以来の再出題となりました。

 スペルアウトの対策は難しいものの、過去問での出題はよくチェックです。

まとめ

 2021年度皮膚科専門医試験についてまとめました。

  • 「ケラチン」・「弾性線維性仮性黄色腫」などこれまで出題傾向は維持
  • 頻出出題の「色素性乾皮症」「環状肉芽腫」「AGA」「ざ瘡」「壊死性遊走性紅斑」「SJS/TEN」「電子顕微鏡」の出題がなく2022年度の出題可能性あり
  • 「接触皮膚炎」・「LE」・「EBV」・「血管性浮腫」などは新傾向の出題

2021年度の過去問の考察は随時更新していきます。

こちらもぜひご覧ください。
皮膚科専門医試験の傾向と対策【8年分の過去問を分析】

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