2019年度皮膚科専門医試験 第19問 食物アレルギーのアレルゲンコンポーネント特異的IgE検査

皮膚科専門医試験

問題19.アレルゲンコンポーネント特異的IgE検査のうち正しい組合せはどれか.2つ選べ

1. 卵白 ――――――――Gal d 1
2. 牛乳 ――――――――Bos d 8
3. 大豆 ――――――――Ara h 2
4. ピーナッツ ―――――Bet v 1
5. ラテックス ―――――Gly m 4

 食物アレルギーは、2015年度から2020年度まで6年連続で出題されている超頻出問題です。

 病院によっては小児科で診療されるために患者対応がないかたもいらっしゃるかもしれません。

 が、皮膚科専門医試験では、原因食物と対応抗原の組み合わせの出題が散見されます。

 「そんなの調べたらわかるし覚えとく必要ある?!」という感じですが、頻出なのでしかたありません。

 とはいえ、過去の出題は、基本的に「食物アレルギー診療ガイドライン」の内容に沿って出題されていて出題範囲は狭く得点源にすることも可能です。

 「食物アレルギー診療ガイドライン2016」は、ダイジェスト版がウェブ公開されていますので参考にするのが良いと思います。

 この記事では、保険診療で測定可能なアレルゲンコンポーネント特異的IgE検査を中心に原因食物と対応抗原について解説しています。

第19問 食物アレルギーのアレルゲンコンポーネント特異的IgE検査【解答:1,2】

第19問 食物アレルギーのアレルゲンコンポーネント特異的IgE検査【解答:1,2】

粗抗原 コンポーネント
タンパク質
タンパク質スーパーファミリー
卵白 Gal d 1
オボムコイド
牛乳 Bos d 4
α-ラクトアルブミン
Bos d 5
β-ラクトグロブリン
Bos d 8
カゼイン
小麦 Tri a 19
ω-5グリアジン
大豆 Gly m 4
PR-10
ピーナッツ Ara h 2
2Sアルブミン
ラテックス Hev b 6. 02
ヘベイン
クルミ Jug r 1
2Sアルブミン
カシューナッツ Ana o 3
2Sアルブミン
2021年現在保険収載されているアレルゲンコンポーネント特異的IgE
太字はタンパク質名・それ以外はタンパク質スーパーファミリー名

 各コンポーネントの名称は「アルファベットと数字」の組み合わせで構成されています。

 これを単に覚えるというのはなんとも苦痛です。

 足しになるかはわかりませんが、コンポーネントの名称の命名法については後述します。

 さて、2021年現在上記10種類のアレルゲンコンポーネント特異的IgE検査が保険適応となっています。

 2018年までは8種類でしたが、2018年に「クルミ」・「カシューナッツ」が保険適応となり計10種類となりました。

 また、保険適応のものに加えて、過去に出題のある3つは今後も出題の可能性が高いと考えられます。

 3つとは、過去問(2016年度 第53問、2018年度 題33問・記述第6問、2020年度 第52問)の

納豆アレルギーのアレルゲンである、ポリガンマグルタミン酸(γPGA)
牛肉アレルギーのアレルゲンである、galactose-α-1,3-galactose(α-gal)
口腔アレルギー症候群(OAS)の原因となる、シラカンバのBet v 1(PR-10)

 が該当します。

 「保険適応なんて関係ない!」という皮膚科専門医試験の意気込みが感じられますね。

  以上から、解答は1,2となります。

 以下では、ガイドラインを参照する時間がないかた向けに食物アレルゲンについてまとめています。

食物アレルゲンの基本【食物アレルギー診療ガイドライン2016 第5章のまとめ】

食物アレルゲンの基本【食物アレルギー診療ガイドライン2016 第5章のまとめ】

 食物アレルゲンの基本については、ガイドラインで以下のように記載されています。

1.食物アレルゲンの本体は、大部分が食物に含まれるタンパク質である。

2.食物中で特異的IgE抗体が結合するそれぞれのタンパク質をアレルゲンコンポーネント、その結合部位をエピトープ(抗原決定基)という。

3.遺伝子配列またはアミノ酸配列が同定されたアレルゲンコンポーネントは、国際分類で命名されている(例:Ara h 2、Gly m 4など)。

4.
植物性食物アレルゲンの多くは4つのタンパク質スーパーファミリー(プロラミン、クーピン、Bet v 1ホモログ(PR10)、プロフィリン)

動物性食物アレルゲンの多くは3つのタンパク質スーパーファミリー(トロポミオシン、パルブアルブミン、カゼイン)に属している。

5.臨床症状と関連のあるアレルゲンコンポーネントが明らかになってきている。

食物アレルギー診療ガイドライン2016 ダイジェスト版 第5章 食物アレルゲンより

 見慣れないアルファベット(Ara h 2など)や「タンパク質スーパーファミリー」がでてきました。今回はこの2つに絞って解説します。

アレルゲンコンポーネントの命名法

 アレルゲンコンポーネントの命名法については、WHOとInternational Union of Immunological Socities(WHO/IUIS)により食物のGenus頭文字3文字とspecies1文字と通し番号で決定されます。

 たとえば、ラッカセイ(ピーナッツ)では

Arachis hypogaea→Ara h 1

 というように決定されます。

 保険適応となっているアレルゲンコンポーネントについては、次の表のような対応になります。

粗抗原 コンポーネント 抗原の属・種
卵白 Gal d 1 Gallus domesticus(にわとり)
牛乳 Bos d 4
 
Bos domesticus(家畜牛)
Bos d 5
Bos d 8
小麦 Tri a 19 Triticum aestivum(パン小麦)
大豆 Gly m 4 Glycine max
ピーナッツ Ara h 2 Arachis hypogaea
ラテックス Hev b 6. 02 Hevea brasiliensis(パラゴムノキ)
クルミ Jug r 1 Juglans regia
カシューナッツ Ana o 3 Anacardium occidentale

タンパク質(スーパー)ファミリー

 アレルゲンは基本的に、タンパク質(スーパー)ファミリーに属し、タンパク質(スーパー)ファミリーの名称も過去に出題されています。

 ガイドラインに記載されているものとしては、「植物性食物アレルゲン」で4種類、「動物性食物アレルゲン」で3種類です。

植物性食物アレルゲンタンパク質スーパーファミリー【OASに関わるPR-10が大切】

植物性食物アレルゲンタンパク質スーパーファミリー
食物アレルギー診療ガイドライン2016 ダイジェスト版 第5章より

 皮膚科専門医試験で特に重要なのは、「PR-10」です。

 PR-10は、シラカンバ花粉の主要なアレルゲンである「Bet v 1」と交差反応を示すタンパク質のファミリーでOASと関連しています。

 実際に、2018年度記述第6問では、Bet v 1を回答する問題が出題されています。

動物性食物アレルゲンタンパク質スーパーファミリー【トロポミオシン・パルブアルブミンが重要!】

動物性食物アレルゲンタンパク質スーパーファミリー
食物アレルギー診療ガイドライン2016 ダイジェスト版 第5章より

 皮膚科専門医試験で特に重要なのは「トロポミオシン」と「パルブアルブミン」です。

タンパク質スーパーファミリー動物
トロポミオシン甲殻類
節足動物(ダニ・ゴキブリ)
パルブアルブミン
近藤康人. “食物アレルゲンコンポーネント コンポーネントを知るとアレルギーが面白い.” アレルギー 67.8 (2018): 996-1002.

 おおざっぱですが、表のように覚えておくと、2016年度の第53問には対応できます。

参考文献

参考文献

 いかがでしたか?

 普段の診療で使わないことも多い食物アレルギーの知識ですが、試験対策として割り切って暗記するしかなさそうです。

  • 物アレルギー診療ガイドライン2016 ダイジェスト版
  • 近藤康人. “食物アレルゲンコンポーネント コンポーネントを知るとアレルギーが面白い.” アレルギー 67.8 (2018): 996-1002.

最後に、こんな風に考えたら答えがかわるかもしれない、というご意見がありましたら、
ぜひコメント・ご意見いただけると嬉しいです。

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他の問題についてもこちらでまとめています。

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