2019年度皮膚科専門医試験 第6問 ざ瘡の内服抗菌薬

皮膚科専門医試験

問題 6.尋常性痤瘡治療ガイドライン(日本皮膚科学会2017 年版)において推奨度の最も高い内服抗菌薬はどれか.
1. ファロペネム
2. ミノサイクリン
3. ドキシサイクリン
4. クラリスロマイシン
5. ロキシスロマイシン

 尋常性ざ瘡の内服抗菌薬に関する問題です。

 ざ瘡も皮膚科専門医試験では頻出問題です。今回は内服抗菌薬に絞って考察していきます。

第6問 ざ瘡の内服抗菌薬【解答:3】

解答:3

 解答だけでいうと、「日本皮膚科学会 尋常性痤瘡治療ガイドライン2017年」では以下のようになっています。

抗菌薬推奨度
ドキシサイクリン50-100mgA
ミノサイクリン100mgA*
ファロペネム(ファロム®)・ロキシスロマイシン(ルリッド®)B
クラリスロマシン・エリスロマイシン・テトラサイクリン
レボフロキサシントスフロキサシン・シプロフロキサシン
ロメフロキサシン・セフロキシム アキセチル(オラセフ®)
C1

太文字は効能効果に「 ざ瘡(化膿性炎症を伴うもの)」の記載あり

 ミノサイクリンは、めまいや色素沈着、自己免疫疾患や薬剤過敏症症候群などの副作用がありドキシサイクリンよりも推奨度がやや下がります。(ドキシサイクリンも光線過敏症の副作用があります。)

 以上から推奨度が最も高いのは「3. ドキシサイクリン」となります。

 ただ、実は「ドキシサイクリン・ミノサイクリン」は添付文書上の効能効果に「ざ瘡」の記載がありません。表在性皮膚感染症」の記載があり保険診療で査定されることはあまりないように思います。

 「ざ瘡」が効能効果に記載されているものは「ファロペネム・ロキシスロマシン・レボフロキサシン・トスフロキサシン・セフロキシム アキセチル」となっています。

 内服抗菌薬の投与は、耐性菌を考慮して3カ月までということも重要ですね。

海外のざ瘡のガイドライン【欧米のガイドラインと比較】

海外のざ瘡のガイドライン【欧米のガイドラインと比較】
海外のざ瘡のガイドライン【欧米のガイドラインと比較】

 日本のガイドラインでは「ファロペネム(ファロム®)・ロキシスロマイシン(ルリッド®)」が推奨度Bとなっていますが、保険適応のことが考慮された推奨度になっておりエビデンスが反映されているかの判断は難しいところです。

 海外のガイドラインはアメリカとヨーロッパのものがそれぞれ出版されていますのでそちらをみてみましょう。

 結論からいうと、キノロン系はもちろん、カルバペネム系の「カ」の文字も記載されていません。

アメリカ皮膚科学会ざ瘡ガイドライン2016

  内服抗菌薬については以下のような推奨となっています。

  1. 内服抗菌薬は、外用治療で反応しない中等度から重症の炎症性ざ瘡に推奨される。
  2. ドキシサイクリンとミノサイクリンはテトラサイクリンよりも効果的だがどちらかが優れているというわけではない。
  3. エリスロマイシンとアジスロマイシンはざ瘡治療に効果的だが、「妊婦や8歳未満」のテトラサイクリンが使用できない場合に使用が限定される。エリスロマイシンは耐性菌の観点から使用は制限されるべき。
  4. テトラサイクリン系・マクロライド系以外の抗菌薬は使用は推奨されず、どちらも使用できない場合や効果がない場合にST合剤の使用を考慮する。
  5. 内服抗菌薬は可能な限り期間を短くし、3-4カ月で再評価を行い耐性菌の出現を最小限にし、外用治療を併用しない内服抗菌薬単剤での治療は推奨されない。
  6. 内服抗菌薬治療中や治療後は、レチノイド/過酸化ベンゾイルの外用を併用すべき。

J Am Acad Dermatol 2016;74:945-73.

ヨーロッパざ瘡ガイドライン2012

  ヨーロッパガイドラインでは、内服抗菌薬について以下のような記載となっています。

  • テトラサイクリンはクリンダマイシンやエリスロマイシンと比べて同等か有効性が高い。
  • ドキシサイクリン・lymecycline(日本での承認なし)・ミノサイクリン・テトラサイクリンの有効性は同等。

JEADV 2012, 26 (Suppl. 1), 1–29.

日本のざ瘡ガイドラインの内服抗菌薬に関する考察

 保険適応の観点では、「ファロペネム(ファロム®)・ロキシスロマイシン(ルリッド®)」の使用も検討されますが、どちらも欧米のガイドラインには薬剤名の記載が全くありません

 ロキシスロマイシンはマクロライド系の抗菌薬です。

 アメリカのガイドラインではマクロライド系のエリスロマシン・アジスロマイシンの使用も考慮されていますが、可能な限りテトラサイクリン系が推奨されています。

 ファロペネムはカルバペネム系の内服薬です。カルバペネム系の内服抗菌薬のざ瘡での使用については欧米のガイドラインに記載がありません。

 ファロペネムが日本で開発された抗菌薬であるとはいえ、日本のガイドラインでだけ推奨され、欧米のガイドラインでは記載がないというのは不思議な話です。もしも、ざ瘡に対する特効薬ならば海外でも推奨されるように思います。

 ただ、日本の皮膚科専門医試験ではそんなことは関係なしですので、専門医試験の時には気にせず

「ファロペネム(ファロム®)・ロキシスロマイシン(ルリッド®)」は
添付文書でざ瘡の効能効果ある薬剤で推奨度が高い

というように記憶しておくのがよいかもしれません。

出典・参考文献

 いかがでしたか?

 この記事では、ざ瘡の内服抗菌薬の問題を考察し、日本のガイドラインの不思議について考えました。

  • 日本皮膚科学会 尋常性痤瘡治療ガイドライン2017
  • Zaenglein, Andrea L., et al. “Guidelines of care for the management of acne vulgaris.” Journal of the American Academy of Dermatology 74.5 (2016): 945-973.
  • Nast, A., et al. “European evidence‐based (S3) guidelines for the treatment of acne.” Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology 26 (2012): 1-29.
  • Zaenglein, Andrea L. “Acne vulgaris.” New England Journal of Medicine 379.14 (2018): 1343-1352.

最後に、こんな風に考えたら答えがかわるかもしれない、というご意見がありましたら、
ぜひコメント・ご意見いただけると嬉しいです。

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他の問題についてもこちらでまとめています。

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