問題37.真菌症について正しいのはどれか.
1. ラブコナゾールは爪カンジダ症にも適応がある.
2. ラブコナゾールは有益性が上回ると判断すれば妊婦にも投与可能である.
3. イトラコナゾール内服パルス療法は爪白癬のみの適応である.
4. 最近足白癬においても薬剤耐性菌が増加している.
5. 頭部白癬にはまず外用抗真菌剤を試みる.
経口抗真菌薬が中心となる問題です。
皮膚科で使用する抗真菌薬は、内服薬と外用薬にわかれますが、やはりどちらもよく出題されます。
年度 | 問題番号 | 内容 |
2013 | 26 | 皮膚カンジダ症に適応のある外用薬 |
2015 | 78 | イトラコナゾールの代謝酵素CYP3A4が関与する内服薬 |
2017 | 29 | 爪白癬の保険適用となる内服薬の標準的な用法・用量 |
2017 | 31 | ミコナゾールゲルの併用禁忌 |
2018 | 26 | イミダゾール系の外用抗真菌薬 |
2019 | 37 | ラブコナゾールとイトラコナゾール |
2020 | 29 | カンジダ性指趾間びらん症に有効な外用薬 |
2020 | 30 | アリルアミン系抗真菌薬 |
外用抗真菌薬については別の記事で考察することにします。
この記事では、テルビナフィン・イトラコナゾール・ホスラブコナゾールを中心とした内服の抗真菌薬の専門医試験対策について考察します。
第37問 経口抗真菌薬の禁忌と用法用量と適応【解答:3】
過去の出題傾向からすると内服の抗真菌薬では禁忌と爪白癬の用法用量の出題が目立ちます。
特に、併用禁忌の薬剤は種類も多く記憶するのは大変ですが、やむをえません。(暗記するよりも毎回、確認するほうが安全だと思うんですけどね。。)
また意外なことに、爪白癬以外での用法用量は2013年から2020年度まで一度も問われていません。
経口抗真菌薬の禁忌【爪白癬内服薬ではテルビナフィンのみ妊娠禁忌なし】
まずは、爪白癬に適応のある経口抗真菌薬3剤をみてみます。
妊娠禁忌がないのは、テルビナフィンのみです。動物実験では200mg/kgという大量投与で母体に障害があるとされますが催奇形性の記載はありません。(200mg/kgはいくらなんでも大量すぎです。)
米国食品医薬品局(FDA)の薬剤胎児危険度分類基準でもテルビナフィンはカテゴリーB(動物実験では胎児に対するリスクが確認されていないが、妊婦に対する適切な、対照のある研究が存在しないもの。または、動物実験で有害な作用が確認されているが、妊婦による対照のある研究では、リスクの存在が確認されていないもの。)とされています。
妊娠中に爪白癬の治療を行う必要があるケースはないように思いますが、妊娠禁忌の場合、特にホスラブコナゾール使用中は避妊をおこなうように添付文書に記載されており注意が必要です。
2019年の爪真菌症のJAADの総説(Journal of the American Academy of Dermatology 80.4 (2019): 853-867.)では、爪真菌症に対するテルビナフィンの使用について「出産・授乳終了後まで遅らせるべき」、イトラコナゾール(カテゴリーC)については「妊娠中は使用せず内服終了後2カ月は避妊すべき」と記載されています。
薬物相互作用による禁忌はイトラコナゾールのみ添付文書で記載があり非常に多いです。
CYP3A4阻害とP糖蛋白阻害によるものですがCYP3A4関連が多いです。
アゼルニジピン(CYP3A4阻害)・スボレキサント(CYP3A4阻害)・リバーロキサバン(CYP3A4とP糖蛋白阻害)は個人的にはよくみますが、どれが出題されてもおかしくないように思います。
添付文書 | テルビナフィン | イトラコナゾール | ホスラブコナゾール |
禁忌 (薬剤以外) | ①重篤な肝障害 ②汎血球減少・ 無顆粒球症・ 血小板減少など 血液障害 ③過敏症 | ①過敏症 ②重篤な肝障害 ③妊娠(動物実験で催奇形) | ①過敏症 ②妊娠(動物で催奇形) →内服中/終了後3か月避妊 |
禁忌薬剤 | 記載なし | コルヒチン(肝or腎障害併存時) ピモジド・キニジン ベプリジル・トリアゾラム シンバスタチン アゼルニジピン ニソルジピン エルゴタミン ジヒドロエルゴタミン エルゴメトリン メチルエルゴメトリン バルデナフィル エプレレノン ブロナンセリン シルデナフィル(レバチオ) タダラフィル(アドシルカ) アスナプレビル バニプレビル スボレキサント イブルチニブ チカグレロル アリスキレン ダビガトラン リバーロキサバン リオシグアト | 記載なし |
爪白癬には保険適応がありませんが、カンジダ症の治療として使用されるフルコナゾール・ミコナゾールゲルの2剤もまとめてみました。
いずれも妊娠は禁忌です。
フルコナゾールは添付文書上、CYP2C9、CYP2C19、CYP3A4を阻害、ミコナゾールゲルはCYP3A、CYP2C9を阻害するとされています。
口腔カンジダ症に保険適応があるミコナゾールゲルの併用禁忌は2017年に出題されています。(太字の薬剤は出題選択肢)
添付文書 | フルコナゾール | ミコナゾールゲル |
禁忌 (薬剤以外) | ①過敏症 ②妊娠(催奇形性を疑う症例報告あり) | ①過敏症 ②妊娠(動物実験で流産増加) |
禁忌薬剤 | トリアゾラム・エルゴタミン ジヒドロエルゴタミン・キニジン ピモジド・アスナプレビル ダクラタスビル アスナプレビル-ベクラブビル アゼルニジピン オルメサルタン メドキソミル -アゼルニジピン(合剤) ロミタピド・ブロナンセリン | ワルファリンカリウム ピモジド キニジン硫酸塩水和物 トリアゾラム シンバスタチン アゼルニジピン オルメサルタン メドキソミル -アゼルニジピン(合剤) ニソルジピン・ブロナンセリン エルゴタミン酒石酸塩 無水カフェイン- イソプロピルアンチピリン ジヒドロエルゴタミンメシル酸塩 リバーロキサバン アスナプレビル ロミタピドメシル酸塩 ルラシドン塩酸塩 |
妊娠の禁忌は押さえたうえで、つらいですが、禁忌薬剤については何度も確認して目に焼き付ける必要がありそうです。
経口抗真菌薬の用法用量【爪白癬がなにより大切】
効能 | テルビナフィン | イトラコナゾール | ホスラブコナゾール |
爪白癬 | 1回125mg 1日1回食後 | 1回200mg 1日2回食直後 1週間内服3週間休薬 3クール(パルス) | 1回100mg 1日1回 12週間 |
爪白癬以外の表在性皮膚真菌症 | 同上 | 1回50-100mg 1日1回食直後 最大1日200mg | 適応なし |
爪カンジダ症 | 同上 | 1回100mg 1日1回食直後 最大1日200mg | 適応なし |
カンジダ性爪囲炎 | 記載なし | 1回100mg 1日1回食直後 最大1日200mg | 適応なし |
深在性皮膚真菌症 | 爪白癬に同じ | 1回100-200mg 1日1回食直後 最大1日200mg | 適応なし |
深在性真菌症(内臓) | 爪白癬に同じ | 1回100-200mg 1日1回食直後 最大1日400mg | 適応なし |
経口抗真菌薬の用法用量は「爪白癬」を押さえましょう。イトラコナゾールの用法用量はかなりややこしいですが、とりあえず「爪白癬」だけは大切です。
例えば、爪白癬に対してイトラコナゾールを内服する場合は「パルス療法のみ」となっています。
つまり、添付文書上は、爪白癬に毎日イトラコナゾールを内服することは「×」となっています。
また、通常のイトラコナゾールはカプセルや錠剤ですが、イトラコナゾール「内用液」には爪白癬の適応やパルス療法の記載はありません。
繰り返しになりますが、近年の経口抗真菌薬の用法用量に関する出題は「爪白癬のみ」です。まずは一言一句逃さずに覚えるのが良いと思います。(「食後」なのか「食事は関係ない」のか、内服期間なども)
白癬に対する経口抗真菌薬のガイドライン上の適応【足白癬・体部/股部白癬でも内服推奨度A】
疾患 | 経口抗真菌薬が推奨される状況 |
足白癬 | ・角化型 ・高度なびらん・浸軟・接触皮膚炎・感染症の合併 |
体部/股部白癬 | ・外用薬を塗布しにくい部位(眼周囲・被髪部との境界) ・患者自身が塗布できない部位 ・白癬病巣が多発/汎発化(M. canis感染症など) ・再発を繰り返している症例 ・毛に対する親和性が高いT. tousurans感染症 |
爪白癬・頭部白癬 | ・基本は経口が推奨 |
「足白癬」や「体部/股部白癬」のほとんどは外用薬で治療しますよね。
日本皮膚科学会皮膚真菌症診療ガイドライン2019でも、両者は基本的に外用で改善すると記載されています。
ただ、上記の場合は内服加療が推奨されています。余裕があれば覚えておいてもよいかもしれません。
「爪白癬」・「頭部白癬」については「内服(A)>外用(B)」の推奨度になっています。
参考文献
いかがでしたか?
添付文書に関する出題にもしっかりと傾向があるのでポイントを絞って対策したいですね。
それにしても、4の選択肢の「足白癬も耐性菌が増加」というのは、よくわからない選択肢ですよね。トコジラミのことを念頭に「足白癬も」としているのか「『最近』っていつからなんだろう?」とか主観によりすぎた選択肢で、もしこれが正答になるのなら、かなりイヤラシイ問題だと思いました。
- ラミシール錠125mg 添付文書 2021年10月改訂 第22版
- イトリゾカプセル50 添付文書 2017年7月改訂 第28版
- ネイリンカプセル100mg 添付文書 2020年2月改訂 第5版
- ジフルカンカプセル 添付文書 2021年10月改訂 第1版
- フロリードゲル経口用2% 添付文書 2021年6月 第1版
- Lipner, Shari R., and Richard K. Scher. “Onychomycosis: treatment and prevention of recurrence.” Journal of the American Academy of Dermatology 80.4 (2019): 853-867.
- 日本皮膚科学会皮膚真菌症診療ガイドライン2019
最後に、こんな風に考えたら答えがかわるかもしれない、というご意見がありましたら、
ぜひコメント・ご意見いただけると嬉しいです。
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