問題28.アプレミラストについて正しいのはどれか.3 つ選べ.
1. 妊婦への投与は禁忌である.
2. 紫外線療法と併用してもよい.
3. 細胞内のcAMP を増加させる.
4. 適応疾患は尋常性乾癬と膿疱性乾癬である.
5. 開始時は,通常10 日間かけて常用量まで増量する.
乾癬の内服治療薬であるアプレミラスト(オテズラ®)に関する出題です。
乾癬関連の次の表のとおり2014年度以降毎年出題されています。
出題数 | 2020 | 2019 | 2018 | 2017 | 2016 | 2015 | 2014 |
乾癬(膿疱性乾癬以外) | 2 | 3 | 2 | 2 | 0 | 2 | 4 |
膿疱性乾癬 | 1 | 1 | 0 | 1 | 1 | 1 | 1 |
2016年度以外では複数の出題があり乾癬は頻出項目です。
そのほかの出題傾向についてはこちらでまとめています。
乾癬の内服薬については、2014年度の第11問(内服薬の標的分子)、2017年度の第22問(シクロスポリンの併用禁忌)で出題がありました。
この記事では、アプレミラストとその他の乾癬の内服薬(エトレチナート・メトトレキサート・シクロスポリン)について解説しています。
第28問 アプレミラスト【解答:1,2,3】
現在日本皮膚科学会には尋常性乾癬の治療ガイドラインがないため、この記事では添付文書の記載をもとに乾癬治療内服薬について解説しています。(乾癬の治療ガイドラインについては後述します。)
2017年の3月にアプレミラスト(オテズラ®)が日本で販売開始となりました。
定期採血なしで使用できるのが使いやすく日々の診療で処方されているかたも多いと思います。
2019年3月には公知申請によりメトトレキサート(リウマトレックス®など)も乾癬の効能が承認されました。
現在日本では、ステロイド薬・抗ヒスタミン薬を除くと、
- エトレチナート(チガソン®)
- シクロスポリン(ネオーラル®など)
- アプレミラスト(オテズラ®)
- メトトレキサート(リウマトレックス®など)
の4種類の内服薬が乾癬に保険適用となっています。
専門医試験について添付文書記載の注意点はこちらです。
- 妊娠禁忌でないのはシクロスポリンのみ
- アプレミラストの効能効果は「尋常性乾癬」と「関節症性乾癬」のみ
- アプレミラストは腎機能障害時には30mg/日に減量を検討
- シクロスポリンは血中濃度を測定(特定薬剤治療管理料1を月1回算定可能)
- アプレミラストは内服中の採血検査記載なし
- エトレチナートは内服前に文書で同意書必要
- ロスバスタチンはシクロスポリンと併用禁忌(2017年第22問で出題)
- エトレチナートとメトトレキサートは内服中止後の避妊期間あり
- エトレチナートでは中止後2年間献血を避ける
- メトトレキサートでは授乳婦も禁忌
以下は比較のため、各添付文書から乾癬関連の項目をまとめました。(2021年7月現在)
エトレチナート | シクロスポリン | アプレミラスト | メトトレキサート | |
禁忌 | 妊婦 | 肝or腎機能障害 でのコルヒチン | 妊婦 | 妊婦 骨髄抑制 慢性肝疾患 腎障害 授乳婦 胸水・腹水 活動性結核 |
原則禁忌 | 妊娠する 可能性 のある婦人 | 記載なし | 記載なし | 記載なし |
効能・効果 | 尋常性乾癬 膿疱性乾癬 乾癬性紅皮症 関節症性乾癬 | 尋常性乾癬 膿疱性乾癬 乾癬性紅皮症 関節症性乾癬 | 尋常性乾癬 関節症性乾癬 | 尋常性乾癬 膿疱性乾癬 乾癬性紅皮症 関節症性乾癬 |
尋常性乾癬での 適用 | 諸治療が無効 かつ 重症 | ≧BSA30% もしくは 難治性 | ≧BSA10% もしくは 難治性 又は 関節症状 | ≧BSA10% もしくは 難治性 又は 関節症状 又は 膿疱 |
用法用量 | 1日2-3回 | 1日2回 | 1日2回 (維持用量) | 1週間単位の 投与量を 1-3回に分けて |
開始用量 ()内は小児 | 40-50mg/日 (1mg/kg) を2-4週間 | 5mg/kg/日 | 朝10mg1回 | 6mg/週 を4-8週間 |
維持用量 ()内は小児 | 10-30mg/日 (0.6- 0.8mg/kg) | 3mg/kg/日 | 朝30mg 夕30mg | 記載なし |
最大用量 | 75mg/日 | 記載なし | 記載なし | 16mg/週 |
増減 | 記載なし | 1カ月に 1mg/kg毎に 増量 | 1日10mg ずつ増量 | 2-4mgずつ増量 |
腎機能による 調整 | 記載なし | 記載なし | CCr <30mL/分 では 1日朝1回 30mg などに減量 | 腎機能障害には 禁忌 |
血中濃度 | 記載なし | 月1回 トラフ値測定 | 記載なし | 記載なし |
治療反応 | 記載なし | 記載なし | 24週で判断 | 記載なし |
定期的な 臨床検査 | 肝機能 (投与前 ・1カ月後 ・3カ月後) トリグリセリド (高TG血症 患者のみ) | 血算 腎機能 肝機能 膵機能 尿検査など | 記載なし | 血算 肝機能 腎機能 尿検査など (投与前 ・4週間ごと) 胸部X線など (投与前) |
25歳以下での 臨床検査 | 定期的なX線 ALP/Ca/P/Mg | 記載なし | 記載なし | 記載なし |
感染症 スクリーニング | 記載なし | B型肝炎ウイルス C型肝炎ウイルス | 記載なし | 結核 B型肝炎ウイルス C型肝炎ウイルス |
同意 | 文書で同意を 得てから使用 | 記載なし | 記載なし | 記載なし |
代謝酵素 | 記載なし | CYP3A4 | CYP3A4 | 記載なし |
併用禁忌 | ビタミンA製剤 | 生ワクチン タクロリムス ピタバスタチン ロスバスタチン ボセンタン アリスキレン アスナプレビル バニプレビル グラゾプレビル ペマフィブラート | 記載なし | 記載なし |
併用注意 | フェニトイン | 紫外線療法 イトラコナゾール テルビナフィン コルヒチン 不活化ワクチン 外用活性型 ビタミンD3製剤 など | CYP3A4酵素 を誘導する薬剤 | NSAIDs テトラサイクリン ST合剤 シプロフロキサシン PPI など |
高齢者 | 減量するなど 注意 | 慎重に投与 | 慎重に投与 | 慎重に投与 |
妊娠する可能性 のある婦人 | 次の正常月経 の2-3日目まで 投与しない。 | 記載なし | 記載なし | 記載なし |
妊娠検査 | 投与開始2週間 以内におこなう など、妊娠して いないことを 確認する | 記載なし | 記載なし | 記載なし |
内服中止後 の避妊 | 女性:2年間 男性:6カ月 | 記載なし | 記載なし | 女性:1月経周期 男性:3カ月 |
内服中止後 の 献血 | 2年間避ける | 記載なし | 記載なし | 記載なし |
妊婦 | 投与しない | 治療上の有益性 が危険を上回る 場合のみ投与 | 投与しない | 投与しない |
動物実験 | 記載なし | 催奇形 難産 周産期死亡 | マウスで 胚胎児毒性 サルで流産 | 催奇形性 |
妊婦での報告 | 胎児・新生児の 頭蓋顔面欠損 ・脊椎欠損 ・四肢欠損 ・骨格異常 | 早産 低出生体重 先天奇形 | 記載なし | 催奇形性 |
授乳婦 | 授乳を避ける | 授乳しないこと がのぞましい | 有益性を考慮し 授乳の継続 又は 中止を検討 | 投与しない |
小児 | 低出生体重児 新生児 乳児 の安全性確立 なし | 慎重に患者選択 | 小児は 臨床試験の 実施なし | 低出生体重児 新生児 乳児 の安全性確立 なし |
小児の 臨床試験 | 記載なし | 低出生体重児 新生児 乳児 では実施なし | 小児は実施なし | 記載なし |
過量投与 | 記載なし | 催吐 活性炭投与 胃洗浄 | 記載なし | ロイコボリン投与 水分補給 尿のアルカリ化 |
透析 | 記載なし | ほとんど 除去されない | 記載なし | 記載なし |
薬効薬理 ターゲット | レチノイン酸 受容体・ レチノイドX 受容体 | カルシニューリン を阻害 | PDE4を阻害し cAMP濃度上昇 | AICARトランス ホルミラーゼ を阻害 DHFRを阻害 |
ひとつひとつの添付文書をみていると比較ができないので、こうしてまとめてみると整理される点もあるのではないでしょうか。
以下は米国の乾癬ガイドラインについてのまとめなので参考程度です。
米国乾癬ガイドライン【日本には尋常性乾癬のガイドラインなし】
乾癬ガイドライン | |
生物学的製剤 | Menter, Alan, et al. Joint AAD-NPF guidelines of care for the management and treatment of psoriasis with biologics. Journal of the American Academy of Dermatology 80.4 (2019): 1029-1072. |
合併症 | Elmets, Craig A., et al. Joint AAD-NPF guidelines of care for the management and treatment of psoriasis with awareness and attention to comorbidities. Journal of the American Academy of Dermatology 80.4 (2019): 1073-1113. |
光線治療 | Elmets, Craig A., et al. Joint American Academy of Dermatology –National Psoriasis Foundation guidelines of care for the management and treatment of psoriasis with phototherapy. Journal of the American Academy of Dermatology 81.3 (2019): 775-804. |
小児治療 | Menter, Alan, et al. Joint American Academy of Dermatology –National Psoriasis Foundation guidelines of care for the management and treatment of psoriasis in pediatric patients. Journal of the American Academy of Dermatology 82.1 (2020): 161-201. |
非バイオ内服 | Menter, Alan, et al. Joint American Academy of Dermatology –National Psoriasis Foundation guidelines of care for the management of psoriasis with systemic nonbiologic therapies. Journal of the American Academy of Dermatology 82.6 (2020): 1445-1486. |
外用治療 | Elmets, Craig A., et al. Joint AAD–NPF Guidelines of care for the management and treatment of psoriasis with topical therapy and alternative medicine modalities for psoriasis severity measures. Journal of the American Academy of Dermatology 84.2 (2021): 432-470. |
日本皮膚科学会からは「乾癬性関節炎」や「膿疱性乾癬(汎発型)」のガイドラインはありますが、尋常性乾癬のガイドラインがありません。
米国では上のようにガイドラインが策定されていますがひとつひとつが30-40ページの超大作です。
日本でも尋常性乾癬のガイドラインを作るとなると膨大な量となるので躊躇してしまうことはしょうがないのかもしれません。
これらのガイドラインについては、すべては目を通せていませんが、非常に詳細に記載されているので日常診療での乾癬の治療について疑問があればたいてい解決してくれそうでおすすめです。
参考文献
いかがでしたか?
添付文書は毎回確認しながら処方していても、内容を完全に暗記するのは厳しいと思います。このきじでは4種類を比較してまとめているので、読んでいただき理解が深まればうれしく思います。
- チガソン®添付文書(2019年1月 第10版)
- ネオーラル®添付文書(2020年2月 第1版)
- オテズラ®添付文書(2020年7月 第2版)
- リウマトレックス®添付文書(2019年3月 第21版)
最後に、こんな風に考えたら答えがかわるかもしれない、というご意見がありましたら、
ぜひコメント・ご意見いただけると嬉しいです。
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