2019年度皮膚科専門医試験 第21問 アトピー性皮膚炎でケラチノサイトが産生するサイトカイン

皮膚科専門医試験

問題21.アトピー性皮膚炎の病変部ケラチノサイトから産生されるサイトカインはどれか.2 つ選べ.

1. IL-4
2. IL-5
3. IL-13
4. IL-33
5. TSLP(Thymic Stromal Lymphopoietin)

 アトピー性皮膚炎のサイトカインに関する出題で第17問とも被る内容です。

 それだけ大切な内容、というわけです。第17問と解説がかぶりますが、古江先生(九州大学)による日本皮膚科学会雑誌の原著の要点を再掲します。

 ポイントは、次の3点です!

  1. 皮膚のバリア機能障害によりケラチノサイトから分泌されTh2細胞を誘導する3つのサイトカイン
  2. 瘙痒」・「好酸球」・「表皮肥厚」を誘導するサイトカイン
  3. フィラグリン・ロリクリン・インボルクリンの発現を抑制し皮膚バリア機能障害を起こすサイトカイン

第21問 アトピー性皮膚炎でケラチノサイトが産生するサイトカイン【解答:4,5】

第21問 アトピー性皮膚炎でケラチノサイトが産生するサイトカイン【解答:4,5】


 アトピー性皮膚炎の病態・サイトカインについては、次の図と表で攻略です!

アトピー性皮膚炎の病態
アトピー性皮膚炎の発症機序;AHR 軸と IL-13/IL-4-JAK-STAT6/STAT3 軸による競合的皮膚バリア調節機構
古江増隆 日皮会誌:130(13),2705-2723,2020(令和 2)

 1.皮膚のバリア機能障害があると、ケラチノサイトから次の3つのサイトカインが産生されTh2細胞を誘導します。

Th2細胞の誘導IL-25(IL-17E)IL-33TSLP
主な産生細胞表皮細胞表皮細胞表皮細胞
IL-4/IL-13刺激によって樹状細胞などが産生するCCL17(TARC)はTh2細胞の遊走に関与。

 2.つづいて、以下のサイトカインによって瘙痒・好酸球・表皮肥厚が誘導されます。

アトピー性皮膚炎の瘙痒IL-4IL-13IL-31TSLP
主な産生細胞Th2細胞Th2細胞Th2細胞表皮細胞
TSLPも神経に直接作用して瘙痒を起こす。(アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2018より)
好酸球の増殖IL-5
主な産生細胞Th2細胞
IL-13/IL-4刺激によって血管内皮細胞が産生するCCL26は好酸球遊走に関与。
表皮の肥厚IL-22
主な産生細胞Th22細胞
掻把によって表皮細胞からCCL20が産生されTh22細胞を誘導、CCL20産生はIL-4/IL-13に影響されない。

 3.IL-4/IL-13はフィラグリン・ロリクリン・インボルクリンの発現を抑制し、皮膚のバリア機能障害をおこします。

フィラグリン
ロリクリン
インボルクリンの発現抑制
IL-4IL-13
主な産生細胞Th2細胞Th2細胞
AHRリガンド(コールタール、紫外線代謝産物、皮膚常在菌代謝産物、腸内細菌叢代謝産物など)・OVOL1はフィラグリン・ロリクリン・インボルクリン発現促進に作用する。また、IL-20/22/24/25/31/33はフィラグリンの発現を抑制する。

 1.のように「TSLP(Thymic stromal lymphoprotein)/IL25/IL33」が、ケラチノサイト(表皮細胞)が分泌する主なサイトカインでした。

 そのほか、3.のように「IL-24」もケラチノサイトから分泌され皮膚バリア機能障害につながる、ということも覚えておいて損はないかもしれません。

 いずれにしても、上の表は今後の出題が予想される重要事項だと思います。

参考文献

参考文献

 いかがでしたか?

 第17問でも類題が出題されています。

 サイトカインの「分泌細胞」・「はたらき」は必須事項です!

  • アトピー性皮膚炎の発症機序;AHR 軸と IL-13/IL-4-JAK-STAT6/STAT3 軸による競合的皮膚バリア調節機構 古江増隆 日皮会誌:130(13),2705-2723,2020(令和 2)

最後に、こんな風に考えたら答えがかわるかもしれない、というご意見がありましたら、
ぜひコメント・ご意見いただけると嬉しいです。

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他の問題についてもこちらでまとめています。

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