問題15.Cornified cell envelopeの主成分はどれか.
1. involucrinとfilaggrin
2. involucrinとloricrin
3. keratinとfilaggrin
4. keratinとinvolucrin
5. keratinとloricrin
Cornified cell envelope(周辺帯)は「角層の構造」分野の頻出問題で、2016年度の第9問でも出題されています。
この記事では、今後出題が予想される、角層細胞の構造、周辺帯の詳細な構造、周辺帯の形成過程(層板顆粒も関与)について解説しています。
第15問 周辺帯の構造【解答:2】
Cornified cell envelope(周辺帯)は、角層細胞の外側を担う構造物で「ロリクリン」と「インボルクリン」などで構成されています。
角層細胞の内側は「フィラグリン」と「ケラチン」で構成され、ケラチン模様(あたらしい皮膚科学第2版 P9)とよばれています。
<角層細胞の構造>
外側:周辺帯(ロリクリンとインボルクリン)
内側:ケラチン模様(フィラグリンとケラチン)
あたらしい皮膚科学には、周辺帯の構成要素としてロリクリンとインボルクリン、トランスグルタミナーゼが記載されていますが、実はそれだけではありません。
詳細な構造が今後出題されることもありえるでしょう。
周辺帯の詳細な構造と形成過程【内層と外層にわかれます】
周辺帯は、角層細胞の外側を担う構造物ですが、さらに内層と外層にわかれます。
<周辺帯の構造>
内層:架橋された蛋白分子(ロリクリン・インボルクリンなど)の10nmの層
外層:セラミドによる5nmの層
基底層から有棘層までの間、細胞内と細胞外を隔てるのは「細胞膜」のみですが、有棘層の上層になると徐々に「細胞膜」が「周辺帯」に変化します。
- 細胞の内側から細胞膜を強化
keratinocyteのCa濃度上昇→エンボプラキン・ペリプラキン・インボルクリンが発現しTGase1(トランスグルタミナーゼ1)により細胞膜上に固定 - 細胞の外側から細胞膜を強化
層板顆粒のセラミドが細胞外に放出され、細胞膜を強化しTGase1で固定される - さらに内側から強化
TGase3がロリクリンとSPRs(small proline-rich proteins)を架橋し、TGase1により周辺帯に固定
こうして「内層と外層からなる『周辺帯』」が完成します。
周辺帯を形成する過程ででてくるトランスグルタミナーゼ1の遺伝子TGM1は、「葉状魚鱗癬」や「先天性魚鱗癬様紅皮症」の病因遺伝子です。
両疾患は過去に出題(2018年度第15問、2017年度第17問)されており、今後TGM1を答える問題が出題される可能性もあると思います。
2019年度の第24問で出題されている「道化師様魚鱗癬」は、層板顆粒の形成ができずセラミド産生が低下することで発症します。同問では病因遺伝子(ABCA12)を回答する出題ですが、今後は層板顆粒から放出されたセラミドが周辺帯の外側を形成する、という知識とも絡めた出題があるかもしれません。
参考文献
- Candi, Eleonora, Rainer Schmidt, and Gerry Melino. “The cornified envelope: a model of cell death in the skin.” Nature reviews Molecular cell biology 6.4 (2005): 328-340.
- 日皮会誌:119(11),2141―2149,2009 2.角層バリア機能と感染防御 山西 清文
- 日皮会誌:117(2),137―141,2007 2.Cornified cell envelope 山本明美
最後に、こんな風に考えたら答えがかわるかもしれない、というご意見がありましたら、
ぜひコメント・ご意見いただけると嬉しいです。
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