V.A.C.®などの局所陰圧閉鎖療法(NPWT)の保険算定

皮膚科の保険算定

 V.A.C®などの局所陰圧閉鎖療法(NPWT)は褥瘡などの治療で皮膚科に欠かせないものになっています。

 2010年に初めて保険収載され当初は入院での通常型の治療のみ(V.A.C.®・RENASYS®)でしたが、2013年以降は外来や在宅での治療にも使用できる単回型(SNaP®・PICO®)も保険収載されました。

 現在、「入院」・「外来」・「在宅医療」で使用できますが算定方法がかなり複雑になっています。

  • V.A.C.®を使ったときにはどうやって処置料を保険算定をすればいいの?
  • 単回型(SNaP®・PICO®)はV.A.C.®とは処置料の算定方法がちがうの?
  • 物品の算定はどうやってすればいいの?

 といった疑問をお持ちの方へ!

 この記事では、「入院」・「外来」での局所陰圧閉鎖療法(NPWT)の算定について解説しています。

V.A.C.®などの局所陰圧閉鎖療法(NPWT)の保険算定

V.A.C.®などの局所陰圧閉鎖療法(NPWT)の保険算定

 局所陰圧閉鎖療法は、フォームとよばれる物品を傷口にあてがってシールで密閉し機器につないで陰圧空間を作ることで傷の治りを早める治療法です。

 フォームの交換は週3回程度おこなうことが一般的で、フォームは特定保険医療材料として算定可能な場合があります。

 つまり、局所陰圧閉鎖療法をおこなう際には「処置料」と「物品(特定保険医療材料)」の算定が可能です。

 ただし、状況によっては算定できない項目があるので注意が必要です。

 まずは処置料の算定からみていきましょう。

処置料の算定

点数
J003 局所陰圧閉鎖処置(入院)(1日につき)
 1 100平方センチメートル未満
 2 100平方センチメートル以上200平方センチメートル未満
 3 200平方センチメートル以上

1,040点
1,060点
1,375点
J003-2局所陰圧閉鎖処置(入院外)(1日につき)
 1 100平方センチメートル未満
 2 100平方センチメートル以上200平方センチメートル未満
 3 200平方センチメートル以上

240点
270点
330点

 局所陰圧閉鎖療法の処置料の保険点数は「入院」と「それ以外」で分けられていて上の表のようになっています。

 使用する状況(入院か外来か)・使用する機器(通常型か単回型か)で算定方法がかわります。

処置料通常型(V.A.C.®・RENASYS®)単回型(SNaP®・PICO®)
入院装着中は毎日算定可処置日のみ週3回まで算定可
外来算定不可(使用不可)処置日のみ、制限なく算定可

 入院での局所陰圧閉鎖療法の処置料は、DPC包括の対象外となる1000点以上の処置にあたるためDPC包括入院でも出来高病棟でも算定が可能です。

 DPC包括入院での算定についてはこちらをごらんください。
他科入院中の皮膚科の保険算定【DPC包括でも算定できるコスト】

 入院中の通常型での処置料は、交換を行わない日でも機器が作動していれば処置料の算定が可能です。

 一方、入院中の単回型の処置料の算定は、週3回までに制限されています。

 もともとは単回型でも入院中なら毎日処置料を算定できていました。
 しかし、通常型のものと比べて病院側の収入がかなり高くなってしまう問題(通常型は機器のレンタル料が毎日7000-8000円かかるが、単回型は20000円程度が週1回かかる程度)があり令和2年度の診療報酬改定で週3回までの算定に制限されることになりました。

 同じ単回型でも外来で使用する場合には、処置の回数に制限はありません。(処置日しか算定ができないのは入院中と同じです。)

 処置の算定をできる期間は、3週間(必要な場合には4週間)までと制限されています。
 これは、次の項目の特定保険医療材料の算定期間が3-4週間と制限されているためです。

 一度処置(3-4週間)をしたあとにどれくらいの期間を空ければ算定可能になるかは決められていませんが、「おおむね3か月空けておくのがよさそう」、とケーシーアイ株式会社(V.A.C.®の製造販売業者)より回答いただきました。(当然、絶対に大丈夫ということではなく最終的には審査機関の判断になりますので参考程度だと思っていただけると幸いです。)

物品(特定保険医療材料)の算定

 局所陰圧閉鎖療法で用いる物品には特定保険医療材料に指定されているものが2種類あり、新しい物品を使用したときに保険算定することが可能です。

 「局所陰圧閉鎖処置用材料」と「陰圧創傷治療用カートリッジ」が特定保険医療材料として指定されています。

 ただし、入院病棟の種類(DPC包括病棟か出来高病棟か)や使用する機器(通常型か単回型か)で算定方法がかわります。

「特定保険医療材料ってなに?」というかたはこちらをごらんください。
 皮膚科の物品の算定【特定保険医療材料と衛生材料・保険医療材料】

特定保険医療材料
(局所陰圧閉鎖処置用材料)
通常型
(V.A.C.®・RENASYS®)
単回型
(SNaP®・PICO®)
入院(DPC包括)算定不可算定不可
入院(出来高)処置日のみ
回数制限なく算定可
処置日のみ
週3回まで算定可
外来使用不可処置日のみ
回数制限なく算定可

 局所陰圧閉鎖処置用材料は、さきほど説明した傷口に直接あてがうフォームのことです。使用面積に応じて算定可能となっています。

 詳細はこちらで解説しています。
 皮膚科の物品の算定【特定保険医療材料と衛生材料・保険医療材料】局所陰圧閉鎖処置用材料

特定保険医療材料
(陰圧創傷治療用カートリッジ)
単回型(SNaP®・PICO®)
入院算定不可
外来交換日のみ回数制限なく算定可

 陰圧創傷治療用カートリッジは、単回型を外来で使用した場合にのみ算定可能です。入院中に単回型を使用しても算定できません。また、通常型には陰圧創傷治療用カートリッジの項目はありません。

 フォームとは別物なのでフォームだけを交換した場合には算定することはできません。

 詳細はこちらで解説しています。
 皮膚科の物品の算定【特定保険医療材料と衛生材料・保険医療材料】陰圧創傷治療用カートリッジ

初回時の加算と新生児・乳幼児加算

処置料の加算【取り付けた初日のみ算定可能です】

 局所陰圧閉鎖処置の加算は「初回加算」・「持続洗浄加算」の2つあり初日のみ算定できます。

 加算の点数はかなり大きいので忘れずに算定したいところです。

 また、骨膜炎・骨髄炎がある場合には「持続洗浄加算」ではなく、「J040 局所灌流 2骨膜・骨髄炎に対するもの」で算定することにも注意が必要です。

初回加算【入院・入院外問わず同じ点数です。】

初回加算
100平方センチメートル未満1,690点
100平方センチメートル以上200平方センチメートル未満2,650点
200平方センチメートル以上3,300点

 フォーム(ドレッシング材)を取り付けた初日に限って1回のみ算定できる加算です。

 処置点数と同様、面積ごとに算定点数が異なります。

 処置を算定できる3-4週間の間に入院や退院をおこなうと、

「局所陰圧閉鎖処置(入院外)」→「局所陰圧閉鎖処置(入院)」
「局所陰圧閉鎖処置(入院)」→「局所陰圧閉鎖処置(入院外)」

 で算定することになりますが、初回加算は、最初に算定した処置料でのみ算定可能で入院(退院)後の処置料で初回加算を算定することはできません。

持続洗浄加算【初回のみ算定可能】

点数
持続洗浄加算500点

 V.A.C. Ulta®を使用して局所陰圧洗浄療法(NPWTi-d)を行った場合にのみ算定可能になる加算です。

 V.A.C Ulta®は、局所陰圧洗浄療法(NPWTi-d)を行える日本で唯一承認された医療機器で、局所の感染がある傷にも使用可能です。(入院でのみ使用可能)

 添付文書上、局所の感染が明らかな場合には通常の局所陰圧閉鎖療法(NPWT)はおこなうことができません。

 局所陰圧洗浄療法(NPWTi-d)は、生理食塩水などを出し入れして持続的に洗浄をおこなう治療法で、局所の感染がある場面でも使用できます。(明らかな感染がある場合には抗生剤投与やデブリードマンをあわせて行う必要があります。)

 ただし、局所陰圧洗浄療法(NPWTi-d)は、局所の感染などがあり、通常の局所陰圧閉鎖療法(NPWT)ではうまく治療できないと考えられる傷にのみ保険適応があります

 また、局所の感染があっても、骨膜(骨を覆う膜)や骨髄の炎症がある場合には、「持続洗浄加算」ではなく、次に説明する「J040 局所灌流 2骨膜・骨髄炎に対するもの」で算定する決まりになっています。

新生児・乳幼児加算【入院での処置のみ算定可】

加算割合
新生児3倍分
3歳未満の乳幼児
(新生児を除く)
1倍分
3歳以上6歳未満の幼児0.5倍分

 令和4年度より新設された加算です。

 入院での処置でのみ加算の算定が可能ですが加算の割合も大きいので要チェックです。

<算定例>

新生児で100cm2未満の入院中の局所陰圧閉鎖処置を行った場合、1,040点に加えて、1,040×3倍=3,120点を算定可能です。

つまり、1日あたり1,040点+3,120点=4,160点の算定が可能となります。

J040 局所灌流2骨膜・骨髄炎に対するもの

点数
J040 局所灌流
2骨膜・骨髄炎に対するもの
1,700点

 骨膜炎や骨髄炎を合併した傷に対して、V.A.C. Ulta®を使用して局所陰圧洗浄療法(NPWTi-d)を行った場合初日のみ算定可能です。

 本来は1日につき1回算定可能な項目であるため、毎日算定できる地域もありましたが、局所陰圧洗浄療法(NPWTi-d)を行う場合には、現在では「持続洗浄加算」に準じて初日のみ算定可能となっています。(ケーシーアイ株式会社(V.A.C.®の製造販売業者)に確認。)

 持続洗浄加算よりも点数が高く、骨膜炎・骨髄炎がある場合にはこちらの項目の算定を忘れないようにしたいですね。

 入院中の加算の使い分けについては、下の表のとおりです。

局所感染なく
NPWTが有効
局所感染はあるが
骨膜炎・骨髄炎なし
骨膜炎・骨髄炎あり
局所陰圧閉鎖療法
(NPWT)
××
局所陰圧洗浄療法
(NPWTi-d)
×
初回加算
持続洗浄加算××
J040 局所灌流
2骨膜・骨髄炎に対するもの
××
〇:保険適応あり ×:保険適応なし

まとめ

まとめ

 いかがでしたか?かなり複雑ですが算定方法を押さえて治療に当たれるといいですね。

 要点をまとめておきます。

  • 算定項目は「処置料」と「特定保険医療材料」の2つ
  • 「入院」or「外来」、「通常型」or「単回型」で算定方法が分かれる。
  • 処置料の算定
    • 入院の通常型では毎日算定可能
    • 入院の単回型では装着・交換日に週3回まで算定可能
    • 外来では単回型のみ使用可能で、装着・交換日に回数制限なく算定可能
  • 特定保険医療材料(局所陰圧閉鎖処置用材料)の算定
    • DPC包括入院では算定不可
    • 出来高病棟入院の通常型ではフォームの装着・交換日は回数制限なく算定可能
    • 出来高病棟入院の単回型ではフォームの装着・交換日に週3回まで算定可能
    • 外来では単回型のみ使用可能で、フォームの装着・交換日に回数制限なく算定可能
  • 特定保険医療材料(陰圧創傷治療用カートリッジ)の算定
    • 通常型では算定不可
    • 入院の単回型では算定不可
    • 外来では単回型のみ使用可能で、カートリッジの装着・交換日に回数制限なく算定可能
  • 算定期間は入院・外来を問わず、計3-4週間まで
  • 「初回加算」は入退院を挟んでも初日に1回のみ算定可能
  • 局所陰圧洗浄療法(NPWTi-d)使用時の加算
    • 「持続洗浄加算」は骨膜炎・骨髄炎がないときに初日のみ算定可能
    • 「J040 局所灌流2骨膜・骨髄炎に対するもの」は骨膜炎・骨髄炎があるときに初日のみ算定可能

そのほか皮膚科の保険算定についてはこちらでまとめています。

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