2019年度皮膚科専門医試験 第36問 黒色真菌症の菌種【Fonsecaea, Exophiala, Phialophora, Cladophialophora】

皮膚科専門医試験

問題36.黒色真菌症の代表的な菌種はどれか.

1. Candida tropicalis
2. Coccidioides immitis
3. Microsporum gypseum
4. Sporothrix globosaSporothrix schenkii
5Exophiala spp.( E. jeanselmei,E. xenobiotica,E. oligosperma

 黒色真菌症は2014~2020年の7年間で4題の出題があります。

 真菌全般について2013年に国際的な真菌の命名法が変更になった影響なのか、単に研究が進んでいないだけなのか、混乱が続き知識があまりまとめられていない印象です。日本語の総説やガイドラインも物足りないように思います。

 ただ、今のところ黒色真菌症は易しい問題が多いので、得点源にしたいところです。

年度番号内容
201621muriform cell / sclerotic cell
201728クロモミコーシス(黒色分芽菌症)の原因菌
201936黒色真菌症の原因菌
201939黒色菌糸症の診断

 黒色分芽菌症のことをクロモミコーシスと呼んだり、黒色真菌症と呼んでみたり、と統一感がありませんが、とりあえず黒色分芽菌症のmuriform cell(sclerotic cell)原因菌を覚えておけば十分そうです。

 ちなみに、日本皮膚科学会皮膚真菌症診療ガイドライン2019では1992年の国際医真菌学会の提唱通りの名称で

  • 黒色分芽菌症(クロモブラストミコーシス)
  • 黒色菌糸症(フェオハイフォミコーシス)

の2項目について記載されています。(ほかの黒色真菌症としては「黒癬」や「黒色顆粒菌腫」がありますがガイドラインでは名前に触れるのみで流されています。)

 この記事では先のガイドラインを中心に、皮膚科専門医試験での黒色真菌症(特に黒色分芽菌症)について解説しています。黒色菌糸症については、別の記事で解説しています。

第36問 黒色真菌症の菌種【解答:5】

第36問 黒色真菌症の菌種【解答:5】


 日本皮膚科学会皮膚真菌症診療ガイドライン2019に記載されている黒色真菌症の菌種は、

疾患名菌種
黒色分芽菌症Fonsecaea monophora
黒色菌糸症Exophiala xenobiotica
E. dermatitidis
日本皮膚科学会皮膚真菌症ガイドライン2019

 以上です。

 黒色分芽菌症(クロモブラストミコーシス)については、直接鏡検や病理組織でmuriform cell(石垣様細胞、sclerotic cell)が特徴とされ診断につながります。

 酵母型と菌糸型の中間型とされていて、免疫を回避する性質があるといわれています。

 2016年の出題では、muriform cellの画像が出題されていますので特徴を理解しておくのが良いと思います。

muriform cell
UpToDate Chromoblastomycosisより
muriform cell
McKee’s Pathology of the Skin 4th edition Chapter 18 FIG.18.343
muriform cell
Weedon’s Skin Pathology 4th edition Chapter 25 FIGURE25.17

 菌種については、上記だけでは物足りないのと、2017年度の出題ではそのほかの菌種名も選択肢に含まれているので、chromoblastomycosisの総説をみてみましょう。

 ある総説(Clinics in dermatology 30.4 (2012): 403-408.)によると、次のように菌種名がまとめられています。

黒色分芽菌症の菌腫
Torres-Guerrero, Edoardo, et al. “Chromoblastomycosis.” Clinics in dermatology 30.4 (2012): 403-408.

 ただ、「F. pedrosoiF. monophoraの形態に違いがない」と総説(日本皮膚科学会雑誌 121.1 (2011): 11-16.)に記載されていたり、専門家の間でも菌種名にはまだまだ混乱がつづきそうなので、あまり深く突っ込まず、ふわっと属名(FonsecaeaとかExophialaとかのこと)だけ押さえておくのがいいと思います。

 あと「黒色菌糸症は免疫不全患者が多い」ということくらいは知っておいてもよいかもです。

 治療も基本的には「菌種に関わらず、外科的切除に加えて、イトラコナゾール300-400mg/日やテルビナフィン250mg/日を少なくとも6か月投与、そのほか局所温熱療法が選択肢になる」と記載されています。(Clinics in dermatology 30.4 (2012): 403-408.)

 専門家でも意見が分かれる分野なので難しい問題を作りにくいのかもしれません。

参考文献

参考文献

 結構、投げやりになってしまいました。いくら調べてもいろんな人がいろんな菌名を書いていて、英語論文でも同じ現象なんですよね。

 僕が理解できていないだけなのかもしれませんが、みなさん混乱してそうです。

 真菌分野は菌名統一問題のせいで研究が止まってしまっているのではないかと疑うほどです。

 名前って大切ですね。

  • 日本皮膚科学会皮膚真菌症診療ガイドライン2019
  • UpToDate, Chromoblastomycosis
  • McKee’s Pathology of the Skin 4th edition
  • Weedon’s Skin Pathology 4th edition
  • Torres-Guerrero, Edoardo, et al. “Chromoblastomycosis.” Clinics in dermatology 30.4 (2012): 403-408.
  • 西村和子. “最近の皮膚科の深在性真菌症原因菌の菌学.” 日本皮膚科学会雑誌 121.1 (2011): 11-16.

最後に、こんな風に考えたら答えがかわるかもしれない、というご意見がありましたら、
ぜひコメント・ご意見いただけると嬉しいです。

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他の問題についてもこちらでまとめています。

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