問題33.学校保健安全法による麻疹が解熱した後の出席停止措置の期間はどれか.
1. 3 日
2. 5 日
3. 1 週間
4. 2 週間
5. 1 か月
2023 年 5 月より新型コロナウイルス感染症は感染症法上の 5 類感染症に見直され、学校保健安全法では第二種感染症に位置づけを変更されました。
これにより、新型コロナウイルス感染症の出席停止期間は「発症した後五日を経過し、かつ、症状が軽快した後一日を経過するまで」に変更されました。
医師国家試験でも出題されるような問題ですが、学校感染症(学校保健安全法施行規則で定められた感染症)に関する出題は2014年~2020年度で5題あります。
年度 | 問題番号 | 出題内容 |
2020 | 91 | 風疹・麻疹・結核・水痘の出席停止期間 |
2019 | 33 | 麻疹の出席停止期間 |
2016 | 87 | プールを禁止する感染症 |
2015 | 89 | 麻疹・風疹・水痘の出席停止期間 |
2014 | 85 | 風疹の出席停止期間 |
皮膚科専門医試験では出席停止だけでなく「プールの参加の可否」についても出題があります。出席停止以外の決まりは法律で定められているわけではありませんが、「学会による統一見解」があり、日本皮膚科学会雑誌のセミナリウム(「保育所・学校における感染症対策: 学校感染症および関連疾患について」)でも解説されています。
この記事では、上記のセミナリウムを中心にプールの参加の可否や新型コロナウイルス感染症の対応を含めて専門医試験対策おける学校感染症について説明しています。
第33問 麻疹の出席停止期間【解答:1】
出席停止期間の出題に関しては、次の表を暗記するしかないです。。
出席停止期間は、2020・2019・2015・2014年に出題があり、いずれも「第二種」学校感染症に関するものでした。
学校感染症は第一種~第三種に分類され、学校保健安全法施行規則で出席停止期間が定められています。
学校感染症 | 出席停止期間 |
第一種 | 治癒するまで |
第二種 | 上記 |
第三種 | 症状により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めるまで |
「第二種」以外の学校感染症について確認しておきます。
学校感染症 | 感染症 |
第一種 | ①感染症法の一類感染症 エボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱、南米出血熱 ペスト、マールブルグ病、ラッサ熱 ②感染症法の結核以外の二類感染症 急性灰白髄炎、ジフテリア 重症急性呼吸器症候群(SARS)、鳥インフルエンザ(H5N1) ③感染症法の新型インフルエンザ等感染症 新型インフルエンザ、再興型インフルエンザ 新型コロナウイルス感染症、再興型コロナウイルス感染症 ④感染症法の指定感染症・新感染症 |
第三種 | コレラ、細菌性赤痢、腸管出血性大腸菌感染症、腸チフス・パラチフス 流行性角結膜炎、急性出血性結膜炎、その他の感染症 |
新型コロナウイルス感染症は「第一種」学校感染症に分類され「治癒するまで」出席停止となります。
2016年には「流行性角結膜炎」がプールの使用を禁止すべき学校感染症として出題されており皮膚疾患以外も問われる可能性があります。
2020年には新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の原因ウイルス(SARS-Cov-2)がRNAウイルスであることを問う出題があり、感染症法・学校保健安全法でのCOVID-19の位置づけについても理解しておくのが良いように思われます。
「その他の感染症」の扱いをめぐる混乱【4学会からの統一見解】
第三種に記載されている「その他の感染症」は法令上、具体的な疾患名の記載がありません。
もともと旧文部省・文部科学省が発行していた「学校において予防すべき感染症の解説」では、
「『その他の感染症』については学校医の意見を聞いて校長が判断すれば『第三種』としての措置を取ることができる」とされています。
「第三種」扱いとなれば「医師が感染のおそれがないと認めるまで」出席停止となりますが「第三種」扱いをするかどうかの判断は現場にゆだねられており、混乱を招いていました。
あいまいな表現による混乱を避けるため、次の5疾患については「基本的に学校を休む必要はない」として、2010年に4学会から統一見解が出されました。
基本的に学校を休む必要がない「その他の感染症」 |
手足口病 |
伝染性紅斑(りんご病) |
頭虱(あたまじらみ) |
伝染性軟属腫(みずいぼ) |
伝染性膿痂疹(とびひ) |
日本臨床皮膚科医会・日本小児皮膚科学会・日本皮膚科学会・日本小児感染症学会 より
これらの疾患は、出席停止が必要な疾患に混ざって出題されるケースもあり「学校を休む必要がない」ことは押さえておくのが良いと思います。
学校感染症とプール参加の可否【伝染性膿痂疹はプール禁止の見解】
プールへの参加 | その他の感染症 |
基本的に禁止 | 伝染性膿痂疹(とびひ) |
基本的に可能 | 伝染性軟属腫(みずいぼ) 頭虱(あたまじらみ) 疥癬(角化型疥癬は外出自体を控える |
日本臨床皮膚科医会・日本小児皮膚科学会より
2016年度には、プールの参加の可否を回答する出題がありました。
プールについては、2013年に2学会より統一見解が出され、
伝染性膿痂疹はプール禁止
伝染性軟属腫・アタマジラミ・疥癬はプール可能
とされています。
統一見解では明確な根拠が示されていませんが、専門医試験では解答の根拠になっていると考えるのが妥当だと思います。
参考文献
いかがでしたか?
根拠はさておき禁止事項を示す、というのは、あまり科学的な姿勢ではないですが、現場の混乱を踏まえると一定の線引きが必要ということでしょう。
皮膚科専門医として、その線引きをする役割も求められているのだと思います。
- 日野治子. “1. 保育所・学校における感染症対策: 学校感染症および関連疾患について.” 日本皮膚科学会雑誌 129.7 (2019): 1477-1494.
- 学校において予防すべき感染症の解説 〈平成30(2018)年3月発行〉 公益財団法人 日本学校保健会(2013年版は文部科学省発行)
- 学校感染症 第三種 その他の感染症:皮膚の学校感染症に関する統一見解(平成22年7月)
- 学校感染症 第三種 その他の感染症:皮膚の学校感染症とプールに関する統一見解(平成25年5月)
最後に、こんな風に考えたら答えがかわるかもしれない、というご意見がありましたら、
ぜひコメント・ご意見いただけると嬉しいです。
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