2019年度皮膚科専門医試験 第31問 貨幣状湿疹のダーモスコピー【不規則な血管分布・黄色の痂疲が重要】

皮膚科専門医試験

問題31.60 歳の女性.6 か月前から全身にそう痒を伴う皮疹があり,貨幣状湿疹と診断され,ベリーストロングのステロイド外用で改善した.図6 の①~⑤に初診時のダーモスコピー像を示す.この患者の写真はどれか.

1. ①
2. ②
3. ③
4. ④
5. ⑤

2019年度皮膚科専門医試験 第31問 貨幣状湿疹のダーモスコピー【不規則な血管分布・黄色の痂疲が重要】

 「黄色の痂疲」が重要と書いてるのに画像がモノクロです。すいません。謹んでお詫びします。

 というわけで、皮膚科とは切っても切れないダーモスコピーの出題です。

 ダーモスコピーはコンスタントに出題されていて、毎年2-5問程度の出題があります。

 出題内容に目を向けると、かつては「基底細胞癌」や「悪性黒色腫」などの色素性腫瘍の鑑別が中心でしたが、最近では「乾癬」・「湿疹」といった炎症性皮膚疾患(Inflammoscopy)や脱毛性疾患(Trichoscopy)も出題される傾向にあります。(2013-2020の出題一覧はこちら

 本問は「貨幣状湿疹のダーモスコピー」の出題で炎症性皮膚疾患のダーモスコピーInflammoscopyの出題ということになります。

 Infammoscopyの総説では「扁平苔癬」・「ジベルバラ色粃糠疹」・「円板状ループス」・「サルコイドーシス・環状肉芽腫・リポイド類壊死」などの肉芽腫性疾患・「硬化性萎縮性苔癬」なども解説されています。(Journal of the American Academy of Dermatology 79.6 (2018): 1117-1132.)

 残念ながら2021年9月現在日本皮膚科学会雑誌のセミナリウムではInflammoscopyの解説記事がありません。

 すべて理解するのは大変なので、まずは過去問で出題されているものをおさえたいですよね。

 そこで、この記事では過去に出題のある「貨幣状湿疹」・「乾癬」のダーモスコピー像と鑑別点について解説しています

第31問 貨幣状湿疹のダーモスコピー【解答:4?】

第16問 ケラチン異常症での変異部位【解答:3】


 モノクロでの画像しか入手できなかったので回答は「?」をつけています。

 本番ではもちろんカラーです。

 大切なのは、本問で問われている「貨幣状湿疹」のダーモスコピー像を理解しておくことだと思います。

 では、2020年に出題された乾癬のダーモスコピー像と比較して鑑別点をみていきましょう。

湿疹と乾癬のダーモスコピーの比較【血管の分布と痂疲の色が重要】

A:乾癬の臨床像、B:湿疹の臨床像、C:乾癬のダーモスコピー像、D:湿疹のダーモスコピー像
Lallas, Aimilios, et al. “Dermoscopy in general dermatology.” Dermatologic clinics 31.4 (2013): 679-694.

 Cが「乾癬」、Dが「湿疹」のダーモスコピー像です。

 見比べるとなんとなくわかるかもしれませんが、言語化も大切です。

 ずばり鑑別に重要なのは

血管の分布
落屑/痂疲の色

です。

 表にまとめると次のようになります。

疾患ダーモスコピー像
乾癬規則的な分布のドット状血管、白色の落屑
湿疹不規則な分布のドット状血管、黄色の痂疲・落屑
Lallas, Aimilios, et al. “Dermoscopy in general dermatology.” Dermatologic clinics 31.4 (2013): 679-694. Table1より

 血管の分布の違いは病理組織から考えるとわかりやすいかもしれません。乾癬では規則的な表皮突起の延長が組織の特徴であり、不規則な表皮突起の延長の場合は湿疹の可能性が高まります。血管は真皮乳頭層のものが見えているため、その分布も表皮突起と同じようになりそうです。

 落屑/痂疲の色については、湿疹の黄色痂疲は滲出液が固着したものと考えると良さそうです。
 また、貨幣状湿疹の黄色痂疲については”Yellow clod sign“として報告されています。(Archives of dermatology 147.11 (2011): 1350-1350.)

 乾癬と湿疹のダーモスコピーでの鑑別点は上記の通りですが、乾癬については特異的な所見も報告されているのでご紹介しておきます。

Red globular rings【乾癬に特異的なダーモスコピー所見】

Red globular rings【乾癬に特異的なダーモスコピー所見】
Vázquez-López, Francisco, et al. “A dermoscopy subpattern of plaque-type psoriasis: red globular rings.” Archives of dermatology 143.12 (2007): 1612-1612.

 赤い点がリング状に配列した”Red globular rings“という所見が2007年に報告されています。

 感度は高くないものの特異度が高い所見として報告され、2013年の論文では乾癬の8%にしか認めないものの、湿疹・扁平苔癬・ジベルバラ色粃糠疹では認められず、乾癬に特異的な所見として再度報告されました。(British Journal of Dermatology 166.6 (2012): 1198-1205.)

 こちらの所見はまだ出題されていないと思いますので今後に注目ですね。

参考文献

参考文献

 今後、他のinflammoscopyの出題もありうるかもしれませんが、まずは乾癬と湿疹のダーモスコピー像について解説しました。

 他疾患についても出題傾向が変われば、他疾患についてもまとめていきたいと思います。

  • Micali, Giuseppe, Anna Elisa Verzì, and Francesco Lacarrubba. “Alternative uses of dermoscopy in daily clinical practice: an update.” Journal of the American Academy of Dermatology 79.6 (2018): 1117-1132.
  • Lallas, Aimilios, et al. “Dermoscopy in general dermatology.” Dermatologic clinics 31.4 (2013): 679-694.
  • Navarini, Alexander A., et al. “The yellow clod sign.” Archives of dermatology 147.11 (2011): 1350-1350.
  • Vázquez-López, Francisco, et al. “A dermoscopy subpattern of plaque-type psoriasis: red globular rings.” Archives of dermatology 143.12 (2007): 1612-1612.
  • Lallas, A., et al. “Accuracy of dermoscopic criteria for the diagnosis of psoriasis, dermatitis, lichen planus and pityriasis rosea.” British Journal of Dermatology 166.6 (2012): 1198-1205.

最後に、こんな風に考えたら答えがかわるかもしれない、というご意見がありましたら、
ぜひコメント・ご意見いただけると嬉しいです。

←前問題 2019年度 第30問
第二世代抗ヒスタミン薬の投与可能時期【禁忌、妊婦・授乳婦、肝腎機能障害、運転上の注意も解説】
 

次問題 2019年度 第32問
Hutchinson徴候【眼科コンサルトは同日必須?】→

他の問題についてもこちらでまとめています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました