問題16.図3にケラチン構造の模式図を示す.ケラチンの重合形成に重要で,ケラチン異常症の症例数が多い変異部位はどれか.
1. ①
2. ②
3. ③
4. ④
5. ⑤
ケラチンに関する出題は2017年度に初めて出題があり2020年度まで毎年出題されている頻出問題です。
2019年度の皮膚科専門医試験ではケラチンに関する出題が2題ありました。本問は第14問につづいて2問目の出題です。
ケラチン異常症は、第14問で説明したようにケラチンの機能異常で発症します。
本問はその原因となるケラチンの変異部位に関する出題です。
この記事ではケラチンの構造や機能についても解説しています。
第16問 ケラチン異常症での変異部位【解答:3】
ケラチンの構造は「Head」・「Rod」・「Tail」の3つの部分に分けられます。
図の通り、ケラチン異常症の原因となる部分は「Rod」の両端部分(1A/2B)に集中しています。
よって回答は1Aをあらわしている③となります。
解答を出すだけならこれでもよいのですが、そもそもケラチンとは何なのでしょうか。
ケラチンの機能や構造はケラチン異常症の症状とも関係しており、今後出題される可能性もあります。
ケラチンとは?【中間径フィラメントに属する細胞骨格蛋白】
ケラチンは、細胞骨格を形成する「アクチンフィラメント」・「中間径フィラメント」・「微小管」のうち、「中間径フィラメント」に属するタンパク質です。
細胞骨格とは、目的のひとつには、細胞の形態を維持するために細胞内に張り巡らされた構造で、上の蛍光顕微鏡画像の赤い線状のものがケラチンです。(Aの青色:核、Bの緑色:デスモプラキン)
「中間径フィラメント」は、タイプⅠからタイプⅥまで6種類(2021年3月時点)が知られており、こちらのデータベースにまとめられています。
タイプⅠからタイプⅥまでのうち、タイプⅠとタイプⅡが「ケラチン」として定義されており上記のケラチンの分類(タイプⅠケラチンとタイプⅡケラチン)は中間径フィラメントの分類がそのまま当てはめられています。
タイプⅠ中間径フィラメント=タイプⅠケラチン
タイプⅡ中間径フィラメント=タイプⅡケラチン
そして、ケラチンはタイプⅠとタイプⅡが重合して機能を発揮します。
その重合にかかわるのが、「Rod」の部分であり本問で出題されています。
ケラチンは、細胞骨格を形成する以外にも、
- 細胞がアポトーシスすることを防ぐ(K8-18)
- 免疫反応にかかわる(K1/16/17)
- 上皮細胞の遊走にかかわる(K6)
(Jacob, Justin T., et al. “Types I and II keratin intermediate filaments.” Cold Spring Harbor perspectives in biology 10.4 (2018): a018275.)
といった役割があるとされています。K8の変異で肝硬変を発症することもなんとなく理解できますね。
参考文献
いかがでしたか。ケラチンは皮膚科専門医試験で頻出問題です。
日常診療では使うことが少ない知識ですが、出題項目は少なく効率的に得点できれば差がつく内容だと思います。
ケラチンについては、第14問の考察ページでもケラチン異常症を中心として説明していますので参考にしていただければうれしいです。
- 日皮会誌:107(6), 739―746, 1997 生涯教育講座 ケラチン病とその類症:表皮分化研究の最前線 真鍋求
- Moll, Roland, Markus Divo, and Lutz Langbein. “The human keratins: biology and pathology.” Histochemistry and cell biology 129.6 (2008): 705.
- 日皮会誌:117(2),129―135,2007 皮膚科セミナリウム 第23回角化症 1.ケラチン 高橋健造
- (Jacob, Justin T., et al. “Types I and II keratin intermediate filaments.” Cold Spring Harbor perspectives in biology 10.4 (2018): a018275.)
最後に、こんな風に考えたら答えがかわるかもしれない、というご意見がありましたら、
ぜひコメント・ご意見いただけると嬉しいです。
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