問題 14.掌蹠の表皮に発現するタイプ I ケラチンはどれか.2 つ選べ.
1. keratin 1
2. keratin 5
3. keratin 9
4. keratin 17
5. keratin 25
ケラチンに関する出題は2017年度に初めて出題があり2020年度まで毎年出題されている頻出問題です。
とくに、ケラチンの遺伝子変異が引き起こすケラチン異常症に関連した問題が多く出題されています。
第14問 掌蹠に発現するケラチン【解答:3,4】
ケラチンは28種類のタイプⅠケラチンと26種類のタイプⅡケラチンに分けられ、タイプⅠとタイプⅡが重合して作用を発揮します。
タイプⅠケラチンはK9-40、タイプⅡケラチンはK1-8、K71-86ですから、タイプⅠケラチンがタイプⅡケラチンに挟まれていると覚えておくとよいかもしれません。
タイプⅠケラチン | ・28種類(K9-K40)。 ・分子量が小さくて酸性。 ・K18のみ12番染色体長腕でそれ以外は17番染色体長腕に位置。 |
タイプⅡケラチン | ・26種類(K1-8、K71-86)。 ・分子量が大きくて塩基性から中性。 ・すべて12番染色体長腕に位置。 |
解答に求められているのはタイプⅠケラチンですから、タイプⅡケラチンであるK1,5は消えてK9、17、25が候補として残ります。
ケラチンは発現する部位もおおかた決まっています。(下表)
ケラチンの部位 | タイプⅠケラチン | タイプⅡケラチン |
表皮基底層 | K14 | K5 |
表皮(基底層以外) | K10 | K1 |
表皮上層 | K2e | |
掌蹠の表皮 | K9 | |
増殖能が高い扁平上皮 | K16,17 | K6 |
毛包上皮特異的ケラチン (特に内毛根鞘) | K25-28 | K71-75 |
毛髪ケラチン (毛髪と爪) | K31-40 | K81-86 |
分布不明ケラチン | K23,24 | K78-80 |
K25は毛包上皮にのみ発現するので残るK9とK17が消去法で残り解答となります。
掌蹠に異常をきたすケラチン異常症を手掛かりにする方法もあります。
ケラチン異常症
機能異常を起こすケラチン | ケラチン異常症 |
K1-10 | 表皮融解性魚鱗癬 表皮母斑の1型 |
K9 | Vörner 型掌蹠角化症 |
K2e | 表在性表皮融解性魚鱗癬 |
K3-12 | Meesmann 型角膜変性症 |
K4-13 | 口腔内白色海綿状母斑 |
K5-14 | 単純型先天性表皮水疱症 |
K6-16, 17 | 先天性爪甲硬厚症 |
K17 | 多発性脂腺嚢腫症 |
K8-18 | 特発性肝硬変症,炎症性腸疾患 |
K81/83/86 | 連珠毛(Monilethrix) |
K85 | recessive ectodermal dysplasia of the hair and nails |
K71/74 | autosomal dominant woolly hair(ADWH) |
K75 | pseudofolliculitis barbae |
Knöbel, Maria, Edel A. O’Toole, and Frances JD Smith. “Keratins and skin disease.” Cell and tissue research 360.3 (2015): 583-589.
ケラチン異常症は、ケラチンの機能異常により発症する疾患です。
本問は掌蹠に発現するケラチンを選ぶものでした。
「掌蹠に異常をきたすケラチン異常症」の原因遺伝子は掌蹠に発現していそうです。
K9・K6/16/K17はそれぞれ「Vörner 型掌蹠角化症」・「先天性爪甲硬厚症」の原因遺伝子で、両疾患とも掌蹠角化を起こします。そこで、選択肢に含まれるタイプⅠケラチンを選ぶと、K9・17と導くこともできます。
ケラチンの発現部位とケラチン異常症は今後も出題が予想されます。覚えることは多いですがひとつずつ押さえていきましょう。
参考文献
いかがでしたか?
ケラチンについては、第16問でも考察しますのでぜひ参考にしてください。
- Jacob, Justin T., et al. “Types I and II keratin intermediate filaments.” Cold Spring Harbor perspectives in biology 10.4 (2018): a018275.
- 膚科セミナリウム 第23 回角化症 1.ケラチン 高橋健造(日皮会誌:117(2),129―135,2007)
- Knöbel, Maria, Edel A. O’Toole, and Frances JD Smith. “Keratins and skin disease.” Cell and tissue research 360.3 (2015): 583-589.
最後に、こんな風に考えたら答えがかわるかもしれない、というご意見がありましたら、
ぜひコメント・ご意見いただけると嬉しいです。
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