皮膚科を専攻すると、外来診療は避けられません。
医療事務のかたも、皮膚科の外来は検査や処置の種類が多くてややこしいですよね。
そこで困るのが、コストの問題です。
- そもそもコストって何?算定って何?
- どうやって費用は決まるの?
- レセプト病名ってなに?
- コストがとれるものってどんなのがあるの?
- どれくらいのコストをとれるの?
といった疑問をお持ちのかたへ!
この記事では、皮膚科診療での
の算定についてまとめています。
そのほかの算定上の注意として以下の項目があります。
診療報酬の仕組み
保険診療でいただく費用は、「患者さんの自己負担」と「保険者からの診療報酬」に分かれます。
診療報酬が支払われる流れを簡略化すると次の図のようになります。
- 患者さんが窓口で自己負担分(1-3割)を支払うと、
- 医療機関は、審査機関に、項目別のお伺いを立てます。
- 審査機関は、病名などから、それが妥当か判断し、
- 妥当な分が保険組合から医療機関に診療報酬として支払われます。
2.の項目がコストをとる専攻医や医療事務のお仕事ですね。
3.で認められない分を、「査定」と呼び、請求をしたのに、診療報酬が支払われない項目です。
医療機関を適切に運営するには、「査定」をなるべく減らすようなコスト請求が求められます。
レセプト病名ってなに?
医療機関がおこなった項目をもとに、審査機関にお伺いを立てて残金が支払われるかの判断がされるということはさきほど説明しましたね。
審査機関の判断の手掛かりとなるのが「レセプト病名」です。
医療機関から請求されたものが、その病名で行われる診療として妥当かどうか判断されます。
審査は、地域の医師会の医師などによってなされます。個々人の判断が入るので地域ごとにルールが異なる場合があります。
ですので、検査、処置、手術、処方、管理料いずれを算定する場合にも「レセプト病名」が必要になりますし、審査機関に算定を認めてもらうための大切な項目です。
算定をおこなう各項目について、病名を入力するのは保険診療では必須事項です。
診療報酬と保険点数
では、さっそく、算定項目と点数をみていきます。
点数とは、保険点数のことで、
1点=10円
で費用が支払われます。(3割負担なら、3円が患者負担、7円が診療報酬です。)
保険点数は2年ごとの診療報酬改定で見直され、次のような書籍が発行されています。
厚生労働省からの通知や留意事項など算定上の注意事項を含めとても参考になります。「皮膚科以外も全部気になる!」という場合には上記の書籍を参考にするのがよいと思います。
ただ、「ちょっと高いし、書籍を買うまではなあ、皮膚科の保険算定だけに気になるなあ」というかたは、おもに皮膚科の診療報酬についてですが、当ウェブサイトでまとめていますので是非参考になさってください。
皮膚科の算定項目【診察・処方・検査・処置・手術・指導管理料】
皮膚科の算定項目は、「診察・処方・検査・処置・手術・指導管理料」に分かれます。
以下の記事では項目の一覧と点数についてまとめていて、リンク先で詳細を解説しています。
診察料
診察料 | 点数 ()内はオンライン診療 |
初診料 | 291点(253点) |
再診料(クリニックや200床未満の病院の再診) | 75点(75点) |
外来診療料(200床以上の病院の再診) | 76点(75点) |
【複数の診療科がある医療機関の診察料】 同日2つ目以降の科の再診料:算定なし |
|
加算 | ()内は再診時 |
乳幼児加算(乳幼児6歳未満) | 75点(38点) |
時間外加算(午後6時から午前8時) | 85点(65点) |
休日加算 | 250点(190点) |
深夜加算(午後10時から午前6時) | 480点(420点) |
大切なのは、初診と再診の区別です。
・診療継続中の患者に、新規の他の疾患で初診を行った場合には、初診料は算定できない。
・最後に受診して1カ月以上経過した後に受診した際には同じ病名でも初診として扱う。
最後に受診してから1カ月たっていれば、仕組み上は初診を算定できる、というわけです。
もちろん、初診と再診の区別は、最終的にどのような保険請求をするかにかかっています。病院によっては3カ月空いた場合にはじめて初診算定する場合もあります。
実務上は、病院の方針にあわせて請求をおこなうのが良いと思います。
処方箋料
処方箋料 | 60点 |
・抗不安薬、睡眠薬、抗うつ薬、抗精神病薬のいずれかを 3 種類以上処方している場合
・7種類以上の内服薬を処方している場合
それぞれ20点、32点となるので注意が必要です。
皮膚科の管理料
皮膚科でコストをとる可能性がある管理料のリストです。
これだけでは、「どんなときにどの項目を算定するのか」はわからないので、状況別に算定する項目について解説する記事を書く予定です。
皮膚科の特定薬剤治療管理料【ネオーラル内服時の算定】
難病外来指導管理料の算定【難病でも算定には条件があります】
皮膚科特定疾患指導管理料とは?【皮膚科の指導管理料の算定】
皮膚科の在宅自己注射指導管理料【加算についても解説】
他科入院中の皮膚科の保険算定【DPC包括でも算定できるコスト】
皮膚科の管理料()内はオンライン診療時 | 点数 |
B001 2 特定薬剤治療管理料 イ 特定薬剤治療管理料1 | 470点 |
B001 7 難病外来指導管理料 | 270点(235点) |
B001 8 皮膚科特定疾患指導管理料 イ 皮膚科特定疾患指導管理料(Ⅰ) ロ 皮膚科特定疾患指導管理料(Ⅱ) | 250点(218点) 100点(87点) |
B001 13 在宅療養指導料 | 170点 |
B001 22 がん性疼痛緩和指導管理料 | 200点 |
B 001 36 下肢創傷処置管理料 | 500点 |
C101 在宅自己注射指導管理料 イ 月27回以下の場合 | 650点(566点) |
皮膚科の検査
皮膚科でコストをとる可能性がある検査のリストです。
これだけでは、「どんなときにどの項目を算定するのか」はわからないので、状況別に算定する項目について解説する記事を書く予定です。
皮膚科の顕微鏡検査での算定は?【皮膚科保険診療の必須知識】
ダーモスコピーの算定は?【いつも算定できるわけではありません】
皮膚科のパッチテストの算定は?
他科入院中の皮膚科の保険算定【DPC包括でも算定できるコスト】
部位ごとの算定、できる?できない?【皮膚科の検査と処置】
皮膚生検の算定は?【蛍光抗体や免疫染色の保険算定も解説】
皮膚科の検査 | 点数 |
D012 感染症免疫学的検査 39 単純ヘルペスウイルス抗原定性(皮膚) 47 単純ヘルペスウイルス抗原定性(性器) 48 水痘ウイル ス抗原定性(上皮細胞) 49 白癬菌抗原定性 | 180点 210点 227点 233点 |
D017 排泄物、滲出物又は分泌物の細菌顕微鏡検査 3 その他のもの:真菌検査、KOH | 67点 |
D018 細菌培養同定検査 5 その他の部位からの検体:真菌培養 | 180点 |
D026 検体検査判断料(それぞれ月1回まで算定可能) 6 免疫学的検査判断料 7 微生物学的検査判断料 | 144点 150点 |
D239-4 全身温熱発汗試験 | 600点 |
D282-4 ダーモスコピー | 72点 |
D291 皮内反応検査、薬物光線貼布試験、最小紅斑量(MED)測定 1 21箇所以内の場合(1箇所につき) 2 22箇所以上の場合(1箇所につき) | 16点 12点 |
D215 超音波検査 2 断層撮影法(心臓超音波検査を除く。) ロ その他の場合 (2)下肢血管:静脈瘤など (3)その他(頭頸部、四肢、体表、末梢血管等):皮膚エコー | 450点 350点 |
D417 組織試験採取、切採法 1 皮膚(皮下、筋膜、腱及び腱鞘を含む。):皮膚生検 | 500点 |
N000 病理組織標本作製 1 組織切片によるもの(1臓器につき):皮膚生検 | 860点 |
N002 免疫染色(免疫抗体法)病理組織標本作製:皮膚生検 8 その他(1臓器につき) 「4種類以上」加算 | 400点 1200点 |
N006 病理診断料 1 組織診断料:皮膚生検 | 450点 |
N004 細胞診 2 穿刺吸引細胞診、体腔洗浄等:Tzanck試験 | 190点 |
N006 病理診断料 2 細胞診断料:Tzanck試験 | 200点 |
皮膚科の処置
皮膚科でコストをとる可能性がある処置のリストです。
これだけでは、「どんなときにどの項目を算定するのか」はわからないので、状況別に算定する項目について解説する記事を書く予定です。
皮膚科の算定での注意【処置をしても算定できない処置料】
紫外線治療の保険算定は?
皮膚科のレーザーの保険算定は?【QスイッチやVビームも解説】
V.A.C.®などの局所陰圧閉鎖療法(NPWT)の保険算定
他科入院中の皮膚科の保険算定【DPC包括でも算定できるコスト】
部位ごとの算定、できる?できない?【皮膚科の検査と処置】
皮膚科の物品の算定【特定保険医療材料と衛生材料・保険医療材料】
皮膚科の処置(※)=外来診療料に含まれる項目 | 点数 |
G 000 皮内、皮下及び筋肉内注射(1回につき) | 25点 |
J000 創傷処置 1 100平方センチメートル未満(※) 2 100平方センチメートル以上500平方センチメートル未満(※) 3 500平方センチメートル以上3,000平方センチメートル未満 4 3,000平方センチメートル以上6,000平方センチメートル未満 5 6,000平方センチメートル以上 | 52点 60点 90点 160点 275点 |
J000-2 下肢創傷処置 1 足部(踵を除く。)の浅い潰瘍 2 足趾の深い潰瘍又は踵の浅い潰瘍 3 足部(踵を除く。)の深い潰瘍又は踵の深い潰瘍 | 135点 147点 270点 |
J001 熱傷処置 1 100平方センチメートル未満(第1度熱傷なら算定できない。) 2 100平方センチメートル以上500平方センチメートル未満 3 500平方センチメートル以上3,000平方センチメートル未満 4 3,000平方センチメートル以上6,000平方センチメートル未満 5 6,000平方センチメートル以上 | 135点 147点 337点 630点 1,875点 |
J001-4 重度褥瘡処置 1 100平方センチメートル未満 2 100平方センチメートル以上500平方センチメートル未満 3 500平方センチメートル以上3,000平方センチメートル未満 4 3,000平方センチメートル以上6,000平方センチメートル未満 5 6,000平方センチメートル以上 | 90点 98点 150点 280点 500点 |
J001-7 爪甲除去(麻酔を要しないもの)(※) | 70点 |
J001-10 静脈圧迫処置(慢性静脈不全に対するもの) | 200点 |
J003 局所陰圧閉鎖処置(入院)(1日につき) 1 100平方センチメートル未満 2 100平方センチメートル以上200平方センチメートル未満 3 200平方センチメートル以上 | 1,040点 1,060点 1,375点 |
J003-2局所陰圧閉鎖処置(入院外)(1日につき) 1 100平方センチメートル未満 2 100平方センチメートル以上200平方センチメートル未満 3 200平方センチメートル以上 | 240点 270点 330点 |
J053 皮膚科軟膏処置(※100平方センチメートル未満は診察料に含まれる) 1 100平方センチメートル以上500平方センチメートル未満(※) 2 500平方センチメートル以上3,000平方センチメートル未満 3 3,000平方センチメートル以上6,000平方センチメートル未満 4 6,000平方センチメートル以上 | 55点 85点 155点 270点 |
J039 血漿交換療法(1日につき) | 4,200点 |
J041-2 血球成分除去療法(1日につき) | 2,000点 |
J054 皮膚科光線療法(1日につき) 3 中波紫外線療法(308ナノメートル以上313ナノメートル以下) | 340点 |
J054-2 皮膚レーザー照射療法(一連につき) 1 色素レーザー照射療法 2 Qスイッチ付レーザー照射療法 イ 4平方センチメートル未満 ロ 4平方センチメートル以上16平方センチメートル未満 ハ 16平方センチメートル以上64平方センチメートル未満 ニ 64平方センチメートル以上 | 2,712点 2,000点 2,370点 2,900点 3,950点 |
J055 いぼ焼灼法 1 3箇所以下 2 4箇所以上 | 210点 260点 |
J055-2 イオントフォレーゼ | 220点 |
J056 いぼ等冷凍凝固法 1 3箇所以下 2 4箇所以上 | 210点 270点 |
J057 軟属腫摘除 1 10箇所未満 2 10箇所以上30箇所未満 3 30箇所以上 | 120点 220点 350点 |
J057-2 面皰圧出法 | 49点 |
J057-3 鶏眼・胼胝処置 | 170点 |
J057-4 稗粒腫摘除 1 10箇所未満 2 10箇所以上 | 74点 148点 |
皮膚科の手術
皮膚科でコストをとる可能性がある手術のリストです。
これだけでは、「どんなときにどの項目を算定するのか」はわからないので、状況別に算定する項目について解説する記事を書く予定です。
皮膚科の「外来」手術の算定【専攻医1年目に必須の知識】
皮膚科の「入院」手術の算定【専攻医1年目に必須の知識】
皮膚科の手術料算定での注意点【一度に2つの手術をしたら両方算定できるのか?】
まとめ
- 診療報酬の仕組み
- 診察料・処方箋料の使い方
- 皮膚科の管理料・検査・処置・手術の算定項目リスト
2年ごとに更新される診療報酬。
皮膚科に特化してまとめていますので参考にしていただけるとうれしいです。