他科入院中の患者さんが皮膚科外来を受診することはよくありますね。
ただ、入院中の患者さんの診察は、DPC包括の場合、一部のものを除いてほとんどの皮膚科の管理料や検査料、処置料が算定できませんが、実は算定できるものもあります。
- よく頼まれるけど入院中の爪切りって算定できるの?
- 皮膚生検はどうなの?
- 入院中でも算定できる検査、処置、管理料ってなに?
といった疑問をお持ちの方へ!
算定できないものがほとんどですが、入院中でも算定できるものがあれば、できれば算定したいところです。
この記事では、入院中の皮膚科診察の保険算定について解説しています。
DPC包括入院も含めた保険算定できる物品についてはこちらでまとめています。
皮膚科の物品の算定【特定保険医療材料と衛生材料・保険医療材料】
<注意>
この記事ではDPC包括算定での入院中の保険算定について限定して説明していますので、出来高算定での入院についてはあてはまらないこともあります。
他科入院中の皮膚科の保険算定【実は算定できるものもあります】
DPC包括入院中も算定できる管理料 | 点数 |
B001 2 特定薬剤治療管理料 イ 特定薬剤治療管理料1 | 470点 |
DPC包括入院中も算定できる検査 | 点数 |
D417 組織試験採取、切採法 1 皮膚(皮下、筋膜、腱及び腱鞘を含む。):皮膚生検 | 500点 |
DPC包括入院中も算定できる処置 | 点数 |
J003 局所陰圧閉鎖処置(入院)(1日につき) 1 100平方センチメートル未満 2 100平方センチメートル以上200平方センチメートル未満 3 200平方センチメートル以上 | 1,040点 1,060点 1,370点 |
J039 血漿交換療法(1日につき) | 4,200点 |
J041-2 血球成分除去療法(1日につき) | 2,000点 |
J054-2 皮膚レーザー照射療法(一連につき) 1 色素レーザー照射療法 2 Qスイッチ付レーザー照射療法 イ 4平方センチメートル未満 ロ 4平方センチメートル以上16平方センチメートル未満 ハ 16平方センチメートル以上64平方センチメートル未満 ニ 64平方センチメートル以上 | 2,712点 2,000点 2,370点 2,900点 3,950点 |
DPC包括算定の入院では、基本的にどんな検査や処置をやっても、1日あたりの点数が決まっています。
入院中にたくさん検査や処置をして医療費が適正に使用されないことを防ぐ目的もあります。
しかし、すべてがDPC包括(まとめ)になっているわけではありません。
DPC包括に含まれる項目は、令和2年 厚生労働省告示第81号に以下のように記載されています。(読み飛ばしてもらって大丈夫です。。これを皮膚科関連でまとめたのが先のリストです。)
ちなみに、手術はDPC包括に含まれませんので別途算定可能です。
2 所定点数には、医科点数表に掲げる点数の費用のうち、イに掲げる点数(ロに掲げる点数の費用を除く。)の費用が含まれるものとする。
厚生労働大臣が指定する病院の病棟における療養に要する費用の額の算定方法の一部を改正する件 令和4年厚生労働省告示第75号
イ 所定点数に含まれる費用
( 1 ) 第1章第2部第1節入院基本料
( 2 ) 第1章第2部第2節入院基本料等加算
( 3 ) 第1章第2部第4節短期滞在手術等基本料
( 4 ) 第2章第1部医学管理等の費用
( 5 ) 第2章第3部検査の費用
( 6 ) 第2章第4部画像診断の費用
( 7 ) 第2章第5部投薬の費用
( 8 ) 第2章第6部注射の費用
( 9 ) 第2章第7部第2節薬剤料
(10) 第2章第8部第2節薬剤料
(11) 第2章第9部処置の費用
(12) 第2章第13部第1節病理標本作製料
ロ イに掲げる点数の費用から除かれる費用
( 1 ) 入院基本料のうち、区分番号A100の注4、注5及び注12、A104の注5及び注10並びにA105の注3、注4及び注9に掲げる費用
( 2 ) 入院基本料等加算のうち、区分番号A205からA206まで、A208からA213まで、A219からA233-2まで、A234-3からA242まで、A244(2に限る。)及びA246からA251までに掲げる費用
( 3 ) 短期滞在手術等基本料のうち、短期滞在手術等基本料1に掲げる費用
( 4 ) 医学管理等の費用のうち、区分番号B000からB001-3-2まで及びB001-6からB015までに掲げる費用
( 5 ) 検査の費用のうち、区分番号D206、D295からD325まで及びD401からD419-2までに掲げる費用
( 6 ) 画像診断の費用のうち、通則第4号及び第6号に掲げる画像診断管理加算1、通則第5号及び第7号に掲げる画像診断管理加算2及び画像診断管理加算3並びに区分番号E003(3のイ(注1及び注2を含む。)に規定する費用に限る。)に掲げる費用
( 7 ) 注射の費用のうち、区分番号G020に掲げる費用
( 8 ) 処置の費用のうち、区分番号J001(5に限る。)、J003、J003-3、J003-4、J010-2、J017、J017-2、J027、J034-3、J038からJ042まで、J043-6、J043-7、J045-2、J047、J047-2、J049、J052-2、J054-2、J062、J116-5、J122(4から6までに限る。ただし、既装着のギプス包帯をギプスシャーレとして切割使用した場合を除く。)、J123からJ128まで(既装着のギプス包帯をギプスシャーレとして切割使用した場合を除く。)、J129(2に限る。ただし、既装着のギプス包帯をギプスシャーレとして切割使用した場合を除く。)及びJ129-2(2に限る。ただし、既装着のギプス包帯をギプスシャーレとして切割使用した場合を除く。)に掲げる処置料並びにJ038(1から3までに限る。)に掲げる人工腎臓に当たって使用した保険医療材料(特定保険医療材料及びその材料価格(材料価格基準)(平成20年厚生労働省告示第61号。以下「材料価格基準」という。)別表Ⅱ区分040(1)及び(5)に掲げる材料に限る。)並びにJ042に掲げる腹膜灌流(1に限る。)に当たって使用した薬剤(腹膜灌流液に限る。)及び保険医療材料(材料価格基準別表Ⅱ区分051から区分053までに掲げる材料に限る。)に係る費用
( 9 ) 病理標本作製料のうち、区分番号N003に掲げる費用
(10) HIV感染症の患者に使用する抗HIV薬に係る費用
(11) 血友病等の患者に使用する遺伝子組換え活性型血液凝固第Ⅶ因子製剤、遺伝子組換え型血液凝固第Ⅷ因子製剤、血液凝固第Ⅷ因子機能代替製剤、遺伝子組換え型血液凝固第Ⅸ因子製剤、乾燥人血液凝固第Ⅷ因子製剤、乾燥人血液凝固第Ⅸ因子製剤(活性化プロトロンビン複合体及び乾燥人血液凝固因子抗体迂回活性複合体を含む。)及び乾燥濃縮人血液凝固第Ⅹ因子加活性化第Ⅶ因子製剤に係る費用
DPC包括入院中も算定できる管理料【特定薬剤治療管理料】
入院中も外来でも算定できる管理料として、特定薬剤治療管理料があり、DPC包括入院中でも算定できます。
アトピー性皮膚炎や尋常性乾癬でシクロスポリン(ネオーラル®)を使用し、血中濃度を測定すれば入院中であってもばっちり算定可能です。
特定薬剤治療管理料は、二種類以上の薬剤を使用していても算定可能なことがあります。
例えば
アトピー性皮膚炎でシクロスポリンを使用している患者が蜂窩織炎で入院し抗生剤としてバンコマイシンを使用している場合
には、シクロスポリンとバンコマイシンの2つの項目でそれぞれ別に特定薬剤治療管理料の算定が可能です。
皮膚科外来でよく算定するほかの管理料(難病外来指導管理料、皮膚科特定疾患指導管理料、在宅自己注射指導管理料)は
外来でのみ算定可能なので入院中に診察をしたとしても残念ながら算定できません。。(ほんとは退院後に受診してほしい。。かも。。)
DPC包括入院中も算定できる検査【皮膚生検だけ算定可能です】
入院中に算定できる項目は、先のリストの通り
DPC包括入院中も算定できる検査 | |
D417 組織試験採取、切採法 1 皮膚(皮下、筋膜、腱及び腱鞘を含む。):皮膚生検 | 500点 |
つまりは「皮膚生検」のみです。
水虫の検査(D017 排泄物、滲出物又は分泌物の細菌顕微鏡検査)や、ヘルペスの検査(N004 細胞診)、発汗テスト(D239-4 全身温熱発汗試験)やダーモスコピー(D282-4 ダーモスコピー)など、
「皮膚生検」以外のほぼすべての皮膚科の検査は、DPC包括では追加での算定ができません。
DPC包括入院中も算定できる処置【1000点以上の項目のみ算定可】
DPC包括入院中も算定できる処置 | |
J001 熱傷処置 5 6,000平方センチメートル以上 | 1,875点 |
J003 局所陰圧閉鎖処置(入院)(1日につき) 1 100平方センチメートル未満 2 100平方センチメートル以上200平方センチメートル未満 3 200平方センチメートル以上 | 1,040点 1,060点 1,375点 |
J039 血漿交換療法(1日につき) | 4,200点 |
J041-2 血球成分除去療法(1日につき) | 2,000点 |
J054-2 皮膚レーザー照射療法(一連につき) 1 色素レーザー照射療法 2 Qスイッチ付レーザー照射療法 イ 4平方センチメートル未満 ロ 4平方センチメートル以上16平方センチメートル未満 ハ 16平方センチメートル以上64平方センチメートル未満 ニ 64平方センチメートル以上 | 2,712点 2,000点 2,370点 2,900点 3,950点 |
DPC包括入院中に算定できる処置は、点数が「1000点以上の項目のみ」です。
血漿交換療法や血球成分除去療法は、一見皮膚科とは関係ありませんが、それぞれ重症の水疱性類天疱瘡や膿疱性乾癬の治療で用いられることがあり、保険適応があるのでリストに含めました。
また、DPC包括入院中のこれらの処置の算定は、「処置料」のみで、使用した薬剤の「薬剤料」や使用した物品の「特定保険医療材料」の算定はできません。(DPC包括でも、手術は薬剤料・特定保険医療材料の算定が可能です。)
「J001-7 爪甲除去(大病院では外来でも算定できませんが。)」・「J054 皮膚科光線療法」・「J056 いぼ等冷凍凝固法(いぼの液体窒素治療)」・「J057-3 鶏眼・胼胝処置」などを含めた皮膚科の処置のほとんどは1000点未満なので、DPC包括入院中は算定できません。
まとめ
<DPC包括入院中に算定できる皮膚科の項目>
- 管理料:特定薬剤治療管理料のみ
- 検査:皮膚生検のみ
- 処置:陰圧閉鎖療法やレーザー治療など1000点以上の項目のみ
- 手術:すべて算定可能
いかがでしたか?
皮膚科の内容は、他科の先生から見ると未知の世界のことが多いので、とりあえず入院中にコンサルト、となることが多いですよね。ただ、その場合に算定できる項目が少ないのは少し残念です。
せめて算定できる項目だけでも確認して算定漏れがないようにしたいですね!
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