ここ数年、美容皮膚科が広がり、レーザーを導入するクリニックも多いです。
美容目的のレーザーは基本的に私費治療になり保険適応はありませんが、レーザー治療の中には保険算定ができるものも存在しています。
ただし、保険算定のルールはかなり複雑です。
保険点数はかなり高いものになっていますが、子どもへのレーザー治療はほとんどの地域で補助があり患者さんの負担も少ないものになっていますので、しっかりとルールをおさえて正しく保険請求したいですね。
- 保険算定できるレーザーの種類ってどんなものがあるの?
- それぞれのレーザーの算定方法は?
- レーザーをあてた部位ごとに保険算定はできるの?
- レーザーを当てられる回数は保険できまっているの?
- どんな病名で保険算定できるの?
といった疑問をお持ちの方へ!
この記事では、皮膚科のレーザー治療の算定について解説しています。
皮膚科のレーザーの保険算定は?【算定の項目は2種類です】
算定項目 | 点数 |
J054-2 皮膚レーザー照射療法(一連につき) 1 色素レーザー照射療法 2 Qスイッチ付レーザー照射療法 イ 4平方センチメートル未満 ロ 4平方センチメートル以上16平方センチメートル未満 ハ 16平方センチメートル以上64平方センチメートル未満 ニ 64平方センチメートル以上 | 2,712点 2,000点 2,370点 2,900点 3,950点 |
色素レーザー照射療法(VbeamⅡなど)は、ヘモグロビンに対して反応するため、主に「赤い」ものに対して行う治療法です。
Qスイッチ付レーザー(Qスイッチ付ルビー/ルビー/Qスイッチ付アレキサンドライト/Qスイッチ付ヤグ)照射療法は、主にメラニンに対して反応するため、「茶色」のものに対して行う治療法です。
保険適応となる病名、回数は以下のように定められています。
色素レーザー | (Qスイッチ付) ルビー |
Qスイッチ付 アレキサンドライト |
Qスイッチ付ヤグ | |
2回まで | 扁平母斑 | |||
5回まで | 太田母斑 異所性蒙古斑 外傷性色素沈着症 |
|||
制限なし | 単純性血管腫 苺状血管腫 毛細血管拡張症 |
太田母斑 異所性蒙古斑 外傷性色素沈着症 |
太田母斑 異所性蒙古斑 外傷性色素沈着症 |
|
保険適応 なし |
美容目的など 上記以外 |
美容目的など 上記以外 |
扁平母斑 美容目的など上記以外 |
美容目的など 上記以外 |
(Qスイッチ付)ルビーレーザーのみ回数制限があるので、回数を超えて保険算定の際には部位や病名を追記する必要があります。
また、扁平母斑は2回と回数制限がありますが、Qスイッチ付ルビーでのみ保険適応があります。(扁平母斑はただでさえ治りにくいのになぜか2回に制限されています。)
レーザー治療算定での注意点【乳幼児加算と算定できる間隔】
乳幼児加算2,200点
3歳未満へのレーザー治療では乳幼児加算2,200点を加算できます。
色素レーザーでの「単純性血管腫」や「苺状血管腫」、Qスイッチ付レーザーでの「異所性蒙古斑」は生下時や生後すぐに受診することが多く3歳未満の場合には算定可能です。
多くの市町村では子供の医療費は「自己負担がない」もしくは「格安」になっていますので親御さんの負担なく高い点数を算定できるのでもれなく算定したいところです。
算定は3か月に1回
レーザー治療は、一連の治療として1回算定でき、一連の治療の期間は3か月と定められています。
もちろん、「苺状血管腫に対して色素レーザー」、「頭頸部の異所性蒙古斑に対してQスイッチ付レーザー」を行っている場合はそれぞれについて3か月に1回算定できます。(色素レーザーとQスイッチ付レーザーの算定の間隔は3か月空ける必要はなし。)
多くの場合は、治療効果判定に3か月以上かかることが多いので3か月の間に何度もレーザーをあてることはないのであまり気にしなくてもよいと思います。
例外として、苺状血管腫の増大期には間隔を狭めて色素レーザーをあてることがあり、その際には3か月間に何度あてたとしても3か月で1回の算定となります。
また、「3か月に1回の算定」というのは、たとえば「9月1日に算定した場合には次回の算定は12月1日以降に算定可能」となります。
色素レーザー照射療法の算定【照射面積拡大加算があります】
色素レーザーは、「単純性血管腫」、「苺状血管腫」、「毛細血管拡張症」で保険適応があります。
10cm2を超える範囲の場合には、「10cm2」増えるごとに、または「端数」が増えるごとに500点を加算して算定します。(照射面積拡大加算)
ただし、以下のきまりがあります。
- 10cm2を超える範囲の場合には、「10cm2」増えるごとに、または「端数」が増えるごとに500点を加算(照射面積拡大加算)
- 照射面積拡大加算は、最大8,500点(「180cm2=10cm2+10cm2×17回」を超えるとそれ以上は加算は増えない)
- 2か所以上あっても合計の面積で算定(異なる疾患であれば別々に算定可能)
たとえば、「1歳児の計23cm2の単純性血管腫」を色素レーザーで治療する場合には、
「色素レーザー照射療法(10cm2分)2,712点」
「照射面積拡大加算1,000点=500点×2(追加10cm2+端数3cm2分)」
「乳幼児加算2,200点」
の算定が3か月おきに可能です。
Qスイッチ付レーザー照射療法の算定【部位ごとに算定可能です】
Qスイッチ付レーザーは、「扁平母斑」、「太田母斑」、「異所性蒙古斑」、「外傷性色素沈着症」で保険適応があります。
ただし、「扁平母斑」は、Qスイッチ付ルビー/ルビーレーザーでのみ保険適応があります。また、Qスイッチ付ルビー/ルビーレーザーは疾患ごとに先の表のように回数制限があり注意が必要です。
Qスイッチ付アレキサンドライトレーザーとQスイッチ付ヤグレーザーでは特に回数の規定はありません。
算定は面積ごとにきまっていて64cm2以上では面積による点数増加はありませんが、以下の部位ごとに算定が可能です。
頭頸部、左上肢、左下肢、右上肢、右下肢、胸腹部、背部(臀部を含む。)の7部位
たとえば、「頭に32cm2の異所性蒙古斑」、「右腕に16cm2の異所性蒙古斑」がある場合には、
「16平方センチメートル以上64平方センチメートル未満(頭頸部) 2,900点」
「16平方センチメートル以上64平方センチメートル未満(右上肢) 2,900点」
というように、それぞれの部位で算定することができます。
また、上記の同一部位でも別疾患で病変が別々にある場合にはそれぞれ算定可能と記載されています。
たとえば、「頭の異所性蒙古斑」と「顔の扁平母斑」は部位がかぶっていなければ別々に算定できます。
まとめ
- 美容目的の治療は保険適応なし
- レーザーの保険算定は3か月に1度
- 3歳未満では乳幼児加算あり
- 色素レーザーは「単純性血管腫」、「苺状血管腫」、「毛細血管拡張症」で保険適応
- 色素レーザーは10cm2ごとに面積拡大加算あり
- Qスイッチ付レーザーは、「扁平母斑」、「太田母斑」、「異所性蒙古斑」、「外傷性色素沈着症」で保険適応
- 扁平母斑はQスイッチ付ルビー/ルビーレーザーでのみ保険適応
- Qスイッチ付レーザーは、頭頸部、左上肢、左下肢、右上肢、右下肢、胸腹部、背部(臀部を含む。)の7部位ごとに算定可能
いかがでしたか?
レーザー治療の保険算定は複雑ですが、ひとつひとつの項目で点数が高いのでしっかりとおさえて算定できるようにしたいですね!
皮膚科の処置の算定についてはこちらにまとめています。
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