2019年度皮膚科専門医試験 第26問 固定性扁豆状角化症の特徴【実は遺伝性皮膚疾患です】

皮膚科専門医試験

問題26.固定性扁豆状角化症(Hyperkeratosis lenticularis perstans)について正しいのはどれか.

1. 小児期に発症する.
2. 前腕伸側に好発する.
3. 角質をはがしても出血しない.
4. SERPINB7 遺伝子変異が関与する.
5. 病変の真皮上層に密な単核球細胞浸潤を伴う.

皮膚科専門医試験受験生
皮膚科専門医試験受験生

固定性扁豆状角化症。。そんなマイナーな疾患の特徴なんて普通わからんでしょ!

 同感です。なんせ2013年度から2020年度まででこの一問のみの出題ですし、あたらしい皮膚科学(第3版)ではたったの4行で説明終わっていますからね。

中高年の四肢,とくに足背や手背に好発.直径 1 〜 5 mm までの赤〜茶褐色調の,鱗屑が固着した棘状の扁平隆起性丘疹で,左右対称性に発症する.原因不明で慢性に経過する.

あたらしい皮膚科学:第3版 第15章 角化症 固定性扁豆状角化症より

 これでは本問に太刀打ちできません。

 そもそも読み方がわかりません。

 「扁豆」ってなに?

 平たい豆なんでしょうけどね。

 どうやらこの豆のことだそうです。

 「扁豆(へんず)」と読むようで、「ヒラマメ・レンズ豆」とも呼ばれています。

 つまり「固定性扁豆(へんず/ひらまめ/れんずまめ)状角化症」と読むようです。

 残念ながら本疾患は、日本皮膚科学会雑誌のセミナリウムで解説されたこともないようですし、「あたらしい皮膚科学」の記載だけでは本問に解答することはできません

 今回、近年の過去問に見当たらない本問が出題されたということは、今後の出題傾向にも影響があると思います。 

 この記事では、英語の教科書を基に「固定性扁豆状角化症」の特徴についてまとめています。

第26問 固定性扁豆状角化症(Flegel病)の特徴【解答:5】

第26問 固定性扁豆状角化症(Flegel病)の特徴【解答:5】


 今回は、有名な英語の教科書「Rook’s Textbook of Dermatology 第9版」の65章と87章の2章を中心にまとめました。

 初報告者の名前をとって「Flegel病」と呼ばれることもあり、Rookではこちらを主病名として採用しています。(こちらのほうが覚えやすい、かな。。。)

  • 定義
    • 高齢者の四肢に赤褐色角化性丘疹が多発する良性の角化症
  • 遺伝形式
    • 常染色体優性遺伝
    • 病因遺伝子は不明
  • 臨床所見
    • 中高年の足背や下腿下部を中心に角化性丘疹を生じる
    • 瘙痒がある人もいる
    • 表面の角化性鱗屑keratotic scaleを除去すると出血する
  • 検査
    • 病理組織
      • 苔癬様反応lichenoid reaction(真皮浅層の帯状のリンパ球浸潤と空胞変性)
      • 顆粒層でのケラトヒアリン顆粒の消失
      • 過角化
    • 電子顕微鏡
      • 急性期病変の顆粒層で層板顆粒(Odland小体)が減少
  • 治療・予後
    • 5FU軟膏外用・レチノイド内服・ビタミンD製剤外用など
    • 難治

 高齢発症なのに、「遺伝性皮膚疾患」で「苔癬様反応」を伴い「炎症性」の要素もある疾患だったんですね。あたらしい皮膚科学では全然触れられてません。。。

 この知識があれば、正しい選択肢は5と解答できますよね。

 ひとまず、これくらいの知識で許してほしいところです。今後の専門医試験での出題に注目です。

 ちなみに臨床像は次のようなものがreviewで報告されています。症状が軽微なら見逃している症例も多いかもしれません。。。あと、確かに「扁豆」みたいな形・大きさですね。

Bortoluzzi, Paolo, et al. “Hyperkeratosis lenticularis perstans (Flegel’s disease): our experience and review of the literature.” International journal of dermatology 60.1 (2021): 33-38. Figure 1より

  同reviewでは病理像も報告されています。しっかりとしたlichenoid reactionですね。

Bortoluzzi, Paolo, et al. “Hyperkeratosis lenticularis perstans (Flegel’s disease): our experience and review of the literature.” International journal of dermatology 60.1 (2021): 33-38. Figure 4より

参考文献

参考文献

 いかがでしたか?

 1958年に本疾患の初報告がありましたが、病因遺伝子は未だ報告されていません。

 本疾患のようなマイナーな遺伝性疾患が出題されるのは、

 第25問の長島型掌蹠角化症の病因遺伝子が日本から報告されたように、

「長年わかっていなかった遺伝性皮膚疾患の病因遺伝子の報告を日本から出してほしい」という期待の表れなのかもしれません。

  • あたらしい皮膚科学:第3版 15章 角化症
  • Rook’s Textbook of Dermatology 第9版 Chapter 65 Inherited Disorders of Cornification
  • Rook’s Textbook of Dermatology 第9版 Chapter 87 Acquired Disorders of Epidermal Keratinization
  • Bortoluzzi, Paolo, et al. “Hyperkeratosis lenticularis perstans (Flegel’s disease): our experience and review of the literature.” International journal of dermatology 60.1 (2021): 33-38.

最後に、こんな風に考えたら答えがかわるかもしれない、というご意見がありましたら、
ぜひコメント・ご意見いただけると嬉しいです。

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他の問題についてもこちらでまとめています。

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