2019年度皮膚科専門医試験 第24問 道化師様魚鱗癬の病因遺伝子【電子顕微鏡所見も解説】

皮膚科専門医試験

問題24.層板顆粒に存在する主要な脂質輸送タンパクをコードし,そのタンパクの欠損により出生時より全身の皮膚が厚い角質に覆われ亀裂を伴い,眼瞼外反・口唇突出・開口制限などを生じると考えられる遺伝子はどれか.

1ABCA12
2. FLG
3. KRT1
4. STS
5. TGM1

 非症候性の遺伝性魚鱗癬が前問に引き続き出題され、本問は「道化師様魚鱗癬」に関する出題です。

 非症候性の遺伝性魚鱗癬については第23問でまとめています。

2019年度 第23問 尋常性魚鱗癬の遺伝形式【遺伝性魚鱗癬(非症候性)】

 さて、「道化師様魚鱗癬」ですが、「2016年度 第12問」にもほぼ同様の出題があり「道化師様魚鱗癬の病因遺伝子」を解答する問題があります。

 この記事では、前問から一歩踏込み「道化師様魚鱗癬」の電子顕微鏡画像をみていきます。

第24問 道化師様魚鱗癬の病因遺伝子【解答:1】

第24問 道化師様魚鱗癬の病因遺伝子【解答:1】


 「道化師様魚鱗癬」の病因遺伝子ABCA12は2005年の日本からの報告でした。(Akiyama, Masashi, et al. “Mutations in lipid transporter ABCA12 in harlequin ichthyosis and functional recovery by corrective gene transfer.” The Journal of clinical investigation 115.7 (2005): 1777-1784.)

 つまり、本問は「日本の皮膚科のすごいとこ知っとけよ!」問題です。いや、もちろん臨床的にも大切です。

 2016年度の出題では「道化師様魚鱗癬」の臨床写真と臨床所見の記載から病因遺伝子を解答する出題でした。

問題12.新生児の男児.出生時から全身を板状の過角化に覆われ,眼瞼外反,口唇の突出開口を認めた.図4 に後頚部,背部の皮膚所見を示す.病因遺伝子として最も疑われるのはどれか.

2016年度 皮膚科専門医試験 第12問

 今回の出題では、問題文に

層板顆粒に存在する主要な脂質輸送タンパクをコード

という文章が加わっています。

 「層板顆粒が関係することも知ってるよね?」

というメッセージをひしひしと感じます。

「層板顆粒ってなんだっけ?」という方はこちらの記事がおすすめです。
2019年度皮膚科専門医試験 第15問 周辺帯の構造【層板顆粒も関与】

 実は2005年のABCA12遺伝子の報告以前、道化師様魚鱗癬の診断は「層板顆粒の減少/欠損」という電子顕微鏡所見が重要でした。

 実臨床では電子顕微鏡所見に触れることはほとんどありませんが、専門医試験では頻出項目です。

 2005年の報告では道化師様魚鱗癬の電子顕微鏡所見も示されており、知っておいて損はないでしょう。

道化師様魚鱗癬の電子顕微鏡所見【層板顆粒の減少/欠損】

道化師様魚鱗癬の電子顕微鏡所見【層板顆粒の減少/欠損】
Akiyama, Masashi, et al. “Mutations in lipid transporter ABCA12 in harlequin ichthyosis and functional recovery by corrective gene transfer.” The Journal of clinical investigation 115.7 (2005): 1777-1784. Figure 5より

 2005年の報告からの引用です。

 左側の道化師様魚鱗癬の患者皮膚では層板顆粒の形成が正しく行われていません。(C/Eの矢印)

 右側の健常皮膚(D/Fの矢印)では、層板顆粒が形成されています。

 Fでは層板顆粒が細胞膜に接し、セラミドを分泌する準備ができています。(道化師様魚鱗癬では、層板顆粒からのセラミド分泌が正しく行われません。)

 電子顕微鏡所見は難易度が高いですが、「見たことがあるか」だけで差がつきやすいかもしれません。

 今回は、病因遺伝子から一歩踏み込んで、道化師様魚鱗癬の電子顕微鏡所見を解説しました。

参考文献

参考文献
  • Akiyama, Masashi, et al. “Mutations in lipid transporter ABCA12 in harlequin ichthyosis and functional recovery by corrective gene transfer.” The Journal of clinical investigation 115.7 (2005): 1777-1784.

最後に、こんな風に考えたら答えがかわるかもしれない、というご意見がありましたら、
ぜひコメント・ご意見いただけると嬉しいです。

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【2013年の日本からの病因遺伝子報告論文も解説】→

他の問題についてもこちらでまとめています。

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