問題17.アトピー性皮膚炎の痒みに直接関与すると考えられているサイトカインはどれか.3つ選べ.
1. IL-4
2. IL-5
3. IL-13
4. IL-31
5. IL-36
皮膚科診療で必ず目にするアトピー性皮膚炎。
commonな疾患であるだけに、専門医試験では深い知識が求められます。
特に、アトピー性皮膚炎の病態で登場するサイトカインは頻出項目です。
皮膚科専門医試験の出題範囲・解答の基準となる「日本皮膚科学会雑誌の原著」を参考にしてアトピー性皮膚炎のサイトカインについてまとめています。
第17問 アトピー性皮膚炎の痒みのサイトカイン【解答:1,3,4】
アトピー性皮膚炎は皮膚科学でもHotな分野なので最新の知見を追い求めると際限がない可能性があります。
ここでは、専門医試験の解答の基準の観点から参考文献を選びました。
日本皮膚科学会雑誌の原著やセミナリウムは専門医試験の解答の基準
2020年の日本皮膚科学会雑誌の総説がとても参考になります。
その総説によると、アトピー性皮膚炎のitch-scratchサイクルについて以下のように説明されています。
1.皮膚のバリア機能障害があると、表皮細胞から次の3つのサイトカインが産生されTh2細胞を誘導します。
Th2細胞の誘導 | IL-25(IL-17E) | IL-33 | TSLP |
主な産生細胞 | 表皮細胞 | 表皮細胞 | 表皮細胞 |
2.つづいて、以下のサイトカインによって瘙痒・好酸球・表皮肥厚が誘導されます。
アトピー性皮膚炎の瘙痒 | IL-4 | IL-13 | IL-31 | TSLP |
主な産生細胞 | Th2細胞 | Th2細胞 | Th2細胞 | 表皮細胞 |
好酸球の増殖 | IL-5 |
主な産生細胞 | Th2細胞 |
表皮の肥厚 | IL-22 |
主な産生細胞 | Th22細胞 |
3.IL-4/IL-13はフィラグリン・ロリクリン・インボルクリンの発現を抑制し、皮膚のバリア機能障害をおこします。
フィラグリン ロリクリン インボルクリンの発現抑制 | IL-4 | IL-13 |
主な産生細胞 | Th2細胞 | Th2細胞 |
ひとまずは、これだけ押さえておけば、ある程度の設問にはこたえられると思います。
今回紹介した総説はアトピー性皮膚炎の病態についてかなり詳しく解説されていますので専門医試験前に是非一度目を通しておくことをおすすめします。
解答は、搔痒に関連するサイトカインを選べばよいので、1,3,4となります。
他の選択肢について考察します。
IL-5は、搔痒や皮疹には影響しないとされています。(抗IL-5抗体であるメポリズマブの臨床試験ではプラセボと比較して好酸球は優位に改善したが、搔痒・皮疹の重症度は有意差がなかった。)
IL-36は、IL-1ファミリーの一員で膿疱性乾癬に関与し瘙痒とは関係ないように思われます。
IL-36受容体アンタゴニストをコードするIL36RNの変異は膿疱性乾癬(汎発型)を引き起こし、DITRA(deficiency of the IL-36R antagonist)と呼ばれています。(”DIRA, DITRA, and new insights into pathways of skin inflammation: what’s in a name?.” Archives of dermatology 148.3 (2012): 381-384.)
ちなみに、膿疱性乾癬も頻出範囲です。
参考文献
今回は、「アトピー性皮膚炎のサイトカイン」について考察しました。
複雑でややこしいですが、頻出範囲です。何とか乗り越えましょう。
- アトピー性皮膚炎の発症機序;AHR 軸と IL-13/IL-4-JAK-STAT6/STAT3 軸による競合的皮膚バリア調節機構 古江増隆 日皮会誌:130(13),2705-2723,2020(令和 2)
- アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2018
- Oldhoff, J. M., Darsow, U., Werfel, T., Katzer, K., Wulf, A., Laifaoui, J., … Bruin-Weller, M. S. (2005). Anti-IL-5 recombinant humanized monoclonal antibody (Mepolizumab) for the treatment of atopic dermatitis. Allergy, 60(5), 693–696.
- Cowen, Edward W., and Raphaela Goldbach-Mansky. “DIRA, DITRA, and new insights into pathways of skin inflammation: what’s in a name?.” Archives of dermatology 148.3 (2012): 381-384.
最後に、こんな風に考えたら答えがかわるかもしれない、というご意見がありましたら、
ぜひコメント・ご意見いただけると嬉しいです。
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