選択問題100問、記述問題20問の出題で、合格率は80.5%でした。
面接が廃止されて2年目の専門医試験でしたが、2019年度同様の選択問題・記述問題の出題数となりました。
筆記試験は選択問題が100問、記述問題が20問です。両者の識別値を比べると前者が0.291、後者が0.434であり、記述問題の識別値が高いことが明らかです。記述問題は採点がたいへんなため、増やすには工夫が必要ですが、選択問題の方でも質を高めていき、簡単すぎる問題や難しすぎる問題を排除していく方向性にしたいと思います。
JDA Letter 2021-Jan 「令和2年度皮膚科専門医認定試験の概況と傾向分析」 専門医試験委員会委員長 田中 勝 先生
※識別値・・・受験者の実力を測るのに適しているかを表す指数
記述問題の重要性が示唆されており、今後記述問題が増える可能性もありそうです。
出題分野について検討すると、出題分野ベスト40からは52問の出題がありました。
ベスト40は近年の出題傾向から選んだものなので当然かもしれませんが、多くの出題がありました。
選択問題【太字の番号は出題分野ベスト40】
番号 | 番号 | ||
1 | 無汗性外胚葉形成異常症 | 51 | 蕁麻疹ガイドラインのステロイド内服 |
2 | 唾液腺 | 52 | 口腔アレルギー症候群 |
3 | 特発性後天性全身性無汗症 | 53 | 薬剤と薬疹の組み合わせ |
4 | 円形脱毛症の合併症 | 54 | 小児のSJSの最多原因 |
5 | 太陽光線の波長 | 55 | ダリエー病 |
6 | 色素性乾皮症 | 56 | 遺伝性皮膚疾患 |
7 | タイトジャンクションの部位 | 57 | 水疱症の原因分子 |
8 | フィラグリンの発現を 低下させるサイトカイン | 58 | 肥厚性皮膚骨膜症 |
9 | ケラチンの分布 | 59 | 石灰化の特殊染色 |
10 | 炎症性ピーリングスキン症候群 | 60 | 黄色腫 |
11 | 肥満細胞の特徴 | 61 | 白色爪の欠乏元素 |
12 | Th2細胞 | 62 | hypomelanosis of Ito (色素失調症との鑑別診断) |
13 | 連圏状粃糠疹 | 63 | 海綿状血管腫を生じる疾患 |
14 | 長島型掌蹠角化症 | 64 | 成人T細胞性白血病/リンパ腫 |
15 | ネザートン症候群 | 65 | ベキサロテンの副作用 |
16 | 乾癬性関節炎のリスク部位 | 66 | 悪性黒色腫 |
17 | 炎症性角化症と病理所見 | 67 | 乳児血管腫の治療 |
18 | 膿疱性乾癬の病因遺伝子 | 68 | 血管肉腫 |
19 | 乾癬患者の合併症 | 69 | 自然消退しない皮疹 |
20 | ジャパニーズスタンダードの 金属アレルゲン | 70 | 菌状息肉症の亜型 |
21 | TARC上昇の疾患 | 71 | 神経線維腫によくみられる細胞 |
22 | 硬化性萎縮性苔癬 | 72 | 脱色素性母斑 |
23 | ファムシクロビルの専制治療 | 73 | 掌蹠・口唇の色素斑 |
24 | RNAウイルス | 74 | 乾癬の血管拡張 |
25 | 単純ヘルペスウイルス感染症 | 75 | 基底細胞癌 |
26 | de novo B型肝炎の発症予防 | 76 | red lacuna |
27 | 生物学的製剤の休薬が必要なワクチン | 77 | メラノーマの除外 |
28 | HPVの型と疾患 | 78 | 金属アレルギー |
29 | カンジダに有効な抗真菌薬 | 79 | non-episodic angioedema with eosinopihilia |
30 | アリルアミン系抗真菌薬 | 80 | 糖尿病に併発する皮膚病変 |
31 | 慢性皮膚粘膜カンジダ症の病因遺伝子 | 81 | 未分化悪性腫瘍の免疫染色 |
32 | 壊死性筋膜炎の検査 | 82 | interface dermatitisの 病理像をとる疾患 |
33 | ハンセン病 | 83 | LEの組織 |
34 | 疥癬の治療 | 84 | 皮膚線維腫とDFSPの鑑別点 |
35 | 重症熱性血小板減少症候群 | 85 | 層板顆粒にある物質 |
36 | HIVに合併する皮膚疾患 | 86 | アダパレンの効能 |
37 | ベーチェット病のHLA | 87 | ACE阻害薬と血管性浮腫 |
38 | LEの治療 | 88 | AGAの5αリダクターゼの作用機序 |
39 | 皮膚外科 | 89 | MRIの造影剤 |
40 | 菱形皮弁 | 90 | 医学倫理 |
41 | PDAIの評価項目 | 91 | 学校保健安全法 |
42 | 先天性表皮水疱症 | 92 | 蛍光抗体直接法の切片の種類と厚さ |
43 | 表皮有棘層の電子顕微鏡 | 93 | 鶏眼の診断と処置の算定 |
44 | 組織球症 | 94 | ジャパニーズスタンダード で反応が遅いもの |
45 | 色素沈着と色素脱失がある疾患 | 95 | 梅毒血清学的検査の自動化法 |
46 | OCA4型 | 96 | XPA |
47 | 掌蹠膿疱症の保険算定 | 97 | 保険診療 |
48 | 壊疽性膿皮症の合併症 | 98 | 保険診療 |
49 | 薬剤過敏症症候群の 腎障害リスクが高い薬剤 | 99 | 医学倫理 |
50 | 固定薬疹 | 100 | ヘルシンキ宣言 |
近年の傾向に沿った出題が多く、
「ケラチン」・「アトピー性皮膚炎」・「色素性乾皮症」
「乾癬」・「弾性線維性仮性黄色腫」・「環状肉芽腫」
「AGA」・「ざ瘡」・「悪性黒色腫」・「帯状疱疹」
「HIV」・「壊死性筋膜炎」・「抗真菌薬」・「結核」
「梅毒」・「疥癬」・「食物アレルギー」・「保険診療」
の18分野については3年以上連続の出題(記述問題含む)となりました。
逆に、出題頻度が高いにも関わらず出題されていないものとしては、
「化学熱傷(フッ化水素・フェノール)」・「サルコイドーシス」
の2分野が挙げられます。この2分野は今後出題される可能性が高いかもしれません。
真新しい問題としては、
「皮膚ループス」に関する出題が2題
「医学倫理」に関する出題が3題
あり、今後出題頻度が増加する可能性があります。
画像問題については、2019年度に初めて出題された皮膚エコーに関する出題はありませんでしたが、今後の出題動向が気になるところです。
そうはいっても対策は必要ですよね。
皮膚エコーについてはこちらの教科書がおすすめです。
ダーモスコピーについては2014年度以来最多の5題の出題があり、今後も継続して出題される可能性が高いと考えられます。
記述問題【太字の番号は出題分野ベスト40】
番号 | 番号 | ||
1 | 赤毛のメラニン | 11 | deck-chair sign |
2 | PLEVAのフルスペル | 12 | 紅色皮膚描記症 |
3 | 壊死性遊走性紅斑 | 13 | 復帰変異モザイク |
4 | アメナメビル | 14 | verruciform xanthoma (2014年記述5に同じ) |
5 | 陰茎結核疹 (2012年記述8に同じ) | 15 | 有棘細胞癌の病期 |
6 | 毛包虫 | 16 | 青色母斑 |
7 | 再発性多発軟骨炎 | 17 | 色素失調症 |
8 | trigeminal trophic syndrome | 18 | 尋常性疣贅の病理 |
9 | 環状肉芽腫 | 19 | イピリムマブの作用機序 |
10 | まだら症のwhite forelock | 20 | メタアナリシス |
5番と14番については、過去問と全く同じ画像からの出題でした。
どちらもこれだけで診断するのはどうなの?(培養とか免染とか必要そう)という印象で正答率も悪かったのかもしれません。
Dermatology Todayの掲示板から回答案を記載しましたがあまり自信はありません。とりあえず、周りと答えを合わせておいて損はないと思います。
略語のフルスペルを求める出題は2017年以来で久しぶりでした。略語をみたら地道にフルスペルを調べていくしかなさそうです。
20番の「メタアナリシス」については2018年につづいての全く同じ問題文での出題でした。そんなに正答率は悪くなさそうな問題だと思うのですが今後はそのほかの臨床研究からの出題があるかもしれません。「RCT(randomized controlled trial)」のフルスペルがでたりするかもですね。(完全な妄想です。)
まとめ
いかがでしたか?
この記事では、2020年度の出題傾向についてまとめました。
今後の試験対策に生かしたいところです。
- 近年の傾向にあった出題が多め
- 出題頻度の高い「化学熱傷」・「サルコイドーシス」は出題なし
- 「皮膚ループス」・「医学倫理」は真新しい出題
- 「皮膚エコー」の出題なく今後の出題動向に注目
- 記述問題の画像については特に過去問が大切
- 略語のフルスペルの問題が復活
2020年度の過去問の考察は随時更新していきます。
こちらもぜひご覧ください。
皮膚科専門医試験の傾向と対策【8年分の過去問を分析】