皮膚科の算定での注意【処置をしても算定できない処置料】

皮膚科の保険算定

 皮膚科の処置の中には、おこなっても、処置料を算定できない項目があります

 それらの項目は、いくら時間や手間がかかっても、診察料に含まれるため算定できません。

  • どんなときにどんな項目が算定できないの?
  • 処置料が算定できなくても使った薬剤も算定できないの?
  • 併算定ができない処置はどんな処置があるの?

 といった疑問をお持ちの方へ!

 この記事では、診察料に含まれてしまうために算定できない処置料について解説しています。

皮膚科の保険算定全体についてはこちらでまとめています。

皮膚科診療に必須の皮膚科特定疾患指導管理料の算定はこちらでまとめています。

皮膚科の顕微鏡検査(2種類)についてはこちらでまとめています。

皮膚科の算定での注意

皮膚科の算定での注意

 次の表は、「初診」・「再診」の皮膚科診療で「算定可能」な項目と「算定不可」な項目の表になっています。

 特に、再診では医療機関の規模によって算定できるものが変わることに注意が必要です。

  初診料 再診料
(クリニックや
200床未満の病院の再診)
外来診療料
(200床以上の病院の再診)
算定可能 ①第1度熱傷の熱傷処置(100cm2以上)
②第1度熱傷以外の熱傷処置
③重度褥瘡処置
④下記以外のもの
算定不可 ①第1度熱傷の熱傷処置
(100cm2未満)
②皮膚科軟膏処置
(100cm2未満)
①第1度熱傷の熱傷処置
(100cm2未満)
②皮膚科軟膏処置
(100cm2未満)
①第1度熱傷の熱傷処置
(100cm2未満)
②皮膚科軟膏処置
(100cm2未満)
③創傷処置
(100cm2未満
/100cm2以上500cm2未満)
④皮膚科軟膏処置
(100cm2以上500cm2未満)
⑤爪甲除去
(麻酔を要しないもの)

 主に関係のある処置の点数は以下の通りです。

皮膚科の処置(※外来診療料に含まれる項目)点数
J000 創傷処置
 1 100平方センチメートル未満(
 2 100平方センチメートル以上500平方センチメートル未満(
 3 500平方センチメートル以上3,000平方センチメートル未満
 4 3,000平方センチメートル以上6,000平方センチメートル未満
 5 6,000平方センチメートル以上

52点
60点
90点
160点
275点
J000-2 下肢創傷処置
 1 足部(踵を除く。)の浅い潰瘍
 2 足趾の深い潰瘍又は踵の浅い潰瘍  
 3 足部(踵を除く。)の深い潰瘍又は踵の深い潰瘍

135点 
147点
270点
J001 熱傷処置
 1 100平方センチメートル未満(第1度熱傷なら算定できない。)
 2 100平方センチメートル以上500平方センチメートル未満
 3 500平方センチメートル以上3,000平方センチメートル未満
 4 3,000平方センチメートル以上6,000平方センチメートル未満
 5 6,000平方センチメートル以上

135点
147点
270点
504点
1,500点
J001-4 重度褥瘡処置
 1 100平方センチメートル未満
 2 100平方センチメートル以上500平方センチメートル未満
 3 500平方センチメートル以上3,000平方センチメートル未満
 4 3,000平方センチメートル以上6,000平方センチメートル未満
 5 6,000平方センチメートル以上

90点
98点
150点
280点
500点
J001-7 爪甲除去(麻酔を要しないもの)(※)60点
J053 皮膚科軟膏処置(※100平方センチメートル未満は診察料に含まれる)
 1 100平方センチメートル以上500平方センチメートル未満(※)
 2 500平方センチメートル以上3,000平方センチメートル未満
 3 3,000平方センチメートル以上6,000平方センチメートル未満
 4 6,000平方センチメートル以上

55点
85点
155点
270点

 次は具体的にはどのように算定が異なるのか見ていきます。

基本診療料(初診料・再診料・外来診療料)に含まれる項目

基本診療料(初診料・再診料・外来診療料)に含まれる項目

 次の二つの処置は基本診療料に含まれるため、どんな状況でも個別に保険算定することができません。(100平方センチメートル未満の皮膚科軟膏処置についてはそもそも保険点数が定められていません。)

  • 100 平方センチメートル未満の第1度熱傷の熱傷処置
  • 100 平方センチメートル未満の皮膚科軟膏処置

 厚生労働省からの通知で以下のように定められています。

第9部 処置料
<通則>
3 浣腸、注腸、吸入、100 平方センチメートル未満の第1度熱傷の熱傷処置、100 平方センチ メートル未満の皮膚科軟膏処置、洗眼、点眼、点耳、簡単な耳垢栓除去、鼻洗浄、狭い範囲の湿布処置その他第1節処置料に掲げられていない処置であって簡単なもの(簡単な物理療法を含む。)の費用は、基本診療料に含まれるものとし、別に算定することはできない

診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知)令和4年3月4日保医発0304第1号別添1

 簡単な処置は、診察料でおこなってください、というわけです。

 ただし、算定できない処置を行った場合でも使用した薬剤は薬剤料として算定可能です。

 ちなみに、第1度熱傷とは、「水ぶくれやじゅくじゅくがない、やけど(熱傷)」のことです。

外来診療料に含まれる項目【大病院の再診では算定できません】

外来診療料に含まれる皮膚科の処置点数
J000 創傷処置
 1 100平方センチメートル未満
 2 100平方センチメートル以上500平方センチメートル未満

52点
60点
J001-7 爪甲除去(麻酔を要しないもの)60点
J053 皮膚科軟膏処置(※100平方センチメートル未満は診察料に含まれる)
 1 100平方センチメートル以上500平方センチメートル未満

55点

 上記の項目は、初診料や再診料(クリニックや200床未満の病院の再診)を算定する際には、算定可能ですが、外来診療料(200床以上の病院の再診)を算定する場合には、算定できません

 厚生労働省からの告示や通知では、外来診療料でのみ以下のように定められています。

第2節 再診料
A002 外来診療料
(12)爪甲除去(麻酔を要しないもの)、穿刺排膿後薬液注入、後部尿道洗浄(ウルツマン)、義眼処置、矯正固定、変形機械矯正術、腰部又は胸部固定帯固定、低出力レーザー照射及び肛門処置は外来診療料に含まれ別に算定できない。

診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知)令和4年3月4日保医発0304第1号別添1

A002 外来診療料
6 第2章第3部検査及び第9部処置のうち次に掲げるものは、外来診療料に含まれるものとする。ただし、第2章第3部第1節第1款検体検査実施料の通則第3号に規定する加算は、外来診療料に係る加算として別に算定することができる。

イ 尿検査区分番号D000からD002-2までに掲げるもの
ロ 糞便検査区分番号D003(カルプロテクチン(糞便)を除く。)に掲げるもの
ハ 血液形態・機能検査区分番号D005(ヘモグロビンA1C(HbA1C)、デオキシチミジンキ ナーゼ(TK)活性、ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)、骨髄像及び造血器腫瘍細胞抗原検査(一連につき)を除く。)に 掲げるもの
創傷処置100平方センチメートル未満のもの及び100平方センチメートル以上500平方センチメートル未満のもの
ホ 削除
皮膚科軟膏処置100平方センチメートル以上500平方センチメートル未満のもの
ト 膀胱洗浄
チ 腟洗浄
リ 眼処置
ヌ 睫毛抜去
ル 耳処置
ヲ 耳管処置
ワ 鼻処置
カ 口腔、咽頭処置
ヨ 間接喉頭鏡下喉頭処置
タ ネブライザー
レ 超音波ネブライザー
ソ 介達牽引
ツ 消炎鎮痛等処置

診療報酬の算定方法の一部を改正する件(告示) 令和4年厚生労働省告示第54号 医科点数表

 もちろん、200床以上の病院でも初診時には算定可能ですし、クリニックや200床未満の病院では初診・再診問わず算定可能です。(初診料や再診料では通知や告示でこのような記載がないためです。)

 このように、爪切り(爪甲除去)は、大病院の皮膚科診療でもよくおこなわれますが、大病院の皮膚科の再診では診察料に含まれるため算定できません。

併算定できない処置【2種類処置をしても1つしか算定できません】

併算定できない処置【2種類処置をしても1つしか算定できません】
併算定できない処置(※外来診療料に含まれる項目)点数
J000 創傷処置
J001 熱傷処置
J001-4 重度褥瘡処置
J053 皮膚科軟膏処置
面積による
(詳細はこちら
J001-7 爪甲除去(麻酔を要しないもの)(※)60点
J057-2 面皰圧出法49点

 これらの処置では以下のようなルールがあります。

  1. 同一部位に創傷処置・皮膚科軟膏処置・面皰圧出法を行っても算定可能なものはひとつのみ
  2. 下肢創傷処置算定時には、創傷処置・爪甲除去(麻酔を要しないもの)は算定できない
  3. 熱傷処置算定時には、創傷処置・爪甲除去(麻酔を要しないもの)は算定できない
  4. 重度褥瘡処置算定時には、創傷処置・爪甲除去(麻酔を要しないもの)は算定できない

 1に関しては、面皰圧出法は49点で、創傷処置、皮膚科軟膏処置の最も範囲が狭い場合よりも点数が低いので、初診で3種類ともおこなったならば、創傷処置や皮膚科軟膏処置で算定するのが良いと思います。

 再診の場合で3種類とも行ったときには、

 クリニックなど再診料を算定する医療機関では創傷処置や皮膚科軟膏処置が狭い面積でも算定できることがあるので、創傷処置や皮膚科軟膏処置を算定する方がよく、

 大病院など外来診療料を算定する医療機関では、狭い面積では創傷処置や皮膚科軟膏処置の算定ができないので、面皰圧出法で算定するともれなく算定できることになる思います。

まとめ

まとめ

初診・再診問わず算定できない項目

  • 100 平方センチメートル未満の第1度熱傷の熱傷処置
  • 100 平方センチメートル未満の皮膚科軟膏処置

初診やクリニックの再診では算定できるが大病院の再診では算定できない皮膚科の処置点数
J000 創傷処置
 1 100平方センチメートル未満
 2 100平方センチメートル以上500平方センチメートル未満

52点
60点
J001-7 爪甲除去(麻酔を要しないもの)60点
J053 皮膚科軟膏処置(※100平方センチメートル未満は診察料に含まれる)
 1 100平方センチメートル以上500平方センチメートル未満

55点

併算定できない処置の項目

同一部位に創傷処置・皮膚科軟膏処置・面皰圧出法を行っても算定可能なものはひとつのみ

下肢創傷処置の算定時には、創傷処置・爪甲除去(麻酔を要しないもの)は算定できない

熱傷処置の算定時には、創傷処置・爪甲除去(麻酔を要しないもの)は算定できない

重度褥瘡処置の算定時には、創傷処置・爪甲除去(麻酔を要しないもの)は算定できない

 いかがでしたか?

 病院の規模によっても算定できる項目とできない項目があるので違いを理解して算定もれがないようにしたいですね!

皮膚科の処置の算定についてはこちらにまとめています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました