皮膚科の在宅自己注射指導管理料【加算についても解説】

皮膚科の保険算定

 近年、自己注射可能で有効性の高い製剤が皮膚科領域でも増えています。
 自己注射は、2023年11月時点では「乾癬・掌蹠膿疱症」「アトピー性皮膚炎・結節性痒疹」「特発性の慢性蕁麻疹」「遺伝性血管性浮腫」「好酸球性多発血管炎性肉芽腫症」の治療に使用可能です。

 この際に、算定するのが在宅自己注射指導管理料です。

  • 在宅自己注射指導管理料ってなに?
  • 皮膚科で自己注射する薬剤の種類は?
  • 皮膚科ではどんなときにどれを算定できるの?
  • 加算の種類がたくさんあるけど使い分けってどうしたらいいの?
  • 併算定できない項目はあるの?

といった疑問をお持ちの方へ!

 この記事では、皮膚科での在宅自己注射指導管理料について解説しています。

皮膚科の在宅自己注射指導管理料

皮膚科の在宅自己注射指導管理料

 皮膚科で算定できる「在宅自己注射指導管理料」は「イ 月27回以下」のものです。
月に1回算定でき皮膚科で算定できる管理料では最も点数が高いです。

点数()内はオンライン診療時
C101 在宅自己注射指導管理料
 イ 月27回以下の場合

650点(566点)

 以下の表は尋常性乾癬・掌蹠膿疱症、アトピー性皮膚炎、特発性の慢性蕁麻疹で皮下注射ができる製剤(2023年11月現在)で自己注射可能な製剤の場合には、患者さんが自己注射を希望すれば在宅自己注射指導管理料を算定できる可能性があります。

 デュピルマブはアトピー性皮膚炎・結節性痒疹、ネモリズマズはアトピー性皮膚炎のそう痒のみ、オマリズマブは特発性の慢性蕁麻疹のみで適応があります。

 またイカチバントラナデルマブは遺伝性血管性浮腫での適応、メポリズマブは好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の適応です。

 ブロダルマブは尋常性乾癬・掌蹠膿疱症、それ以外は尋常性乾癬での適応(一部、関節症性乾癬や膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症にも適応あり)です。

投与間隔が4週間をこえるものは自己注射の適応がない点に注意が必要です。

TNFα阻害薬 投与頻度 自己注射
アダリムマブ(ヒュミラ) 0,1週目(初回のみ倍量の80mg)
以後2週おき(40mg)
セルトリズマブ(シムジア) 2週おき
(最初の3回のみ倍量の400mg)
IL12/IL23阻害薬    
ウステキヌマブ(ステラーラ) 0,4週目
以後12週おき
(体重≧100kgや不十分なら倍量の90mg)
×
IL17A阻害薬    
セクキヌマブ(コセンティクス) 0,1,2,3,4週目
以後4週おき(300mg)
(日本の添付文書上は半減OK)
イキセキズマブ(トルツ) 0,2,4,6,8,10,12週目(倍量の160mg)
以後4週おき(80mg)
ブロダルマブ(ルミセフ) 0,1,2週目以後2週おき(210mg)
IL17A/IL17F阻害薬    
ビメキズマブ(ビンゼレックス)
0,4,8,12,16週目以後4or8週おき(320mg)


(4週おき)

IL23阻害薬    
グセルクマブ(トレムフィア) 0,4週目
以後8週おき(100mg)
×
チルドラキズマブ(イルミア)
0,4週目
以後12週おき(100mg)
×
リサンキズマブ(スキリージ) 0,4週目
以後12週おき(150mg)
(半減OK)
×
IL4/IL13阻害薬    
デュピルマブ(デュピクセント) 2週おき
(初回のみ倍量の600mg)
IL13阻害薬    
トラロキヌマブ(アドトラーザ) 2週おき
(初回のみ倍量の600mg)
×
IL31A阻害薬    
ネモリズマブ(ミチーガ) 4週おき(60mg)
IgE抗体阻害薬    
オマリズマブ(ゾレア) 4週おき(300mg)
ブラジキニンB2阻害薬    
イカチバント(フィラジル) 発作時(10-30mg)
カリクレイン阻害薬    
ラナデルマブ(タクザイロ) 2-4週おき(300mg)
IL5阻害薬    
メポリズマブ(ヌーカラ) 4週おき(300mg)

 また、乾癬製剤の使用は日本皮膚科学会から承認施設が定められており、こちらから使用施設の確認ができます。(学会の自主規制で法的根拠は明らかではない)

 デュピルマブ・ネモリズマブ・イカチバント・ラナデルマブ・メポリズマブではそのような施設要件はありませんので基本的には要件を満たした医師がいればどの医療機関でも取り扱いが可能です。

 オマリズマブは、「皮膚科専門医またはアレルギー専門医が,当該施設で,あるいは近隣医療機関と連携して,喘息,アナフィラキシー等の有害事象に対応できる体制のもとで使用すること」という施設要件があります。

 自己注射は2回以上の指導を医師が行った場合に開始でき、2回目の指導時に自己注射分を処方することが多いです。(スケジュールの例はこちら

この初回の処方時に在宅自己注射指導管理料を算定することが多いです。

加算の種類は?

加算の種類は?

加算は以下の2種類です。

導入初期加算580点
バイオ後続品導入加算150点

導入初期加算:580点

 初めて自己注射を導入した月から3カ月間のみ算定できる加算です。

 受診がなければ加算の算定もできないので、最初の3か月間は毎月受診してもらうようにすればもれなく加算の算定が可能です。

 また、処方内容を別の薬剤に変更した場合にも1回のみ算定可能です。

バイオ後続品導入加算:150点

 2021年6月現在、尋常性乾癬に対して「ヒュミラ」の後続品である「アダリムマブBS」のみ後続品で自己注射可能となっています。

 2023年6月現在、アトピー性皮膚炎は後続品で自己注射可能な製剤はありません。

 今後、先発品の特許切れになるにつれて自己注射可能な後続薬がでてきます。

 バイオ後続品導入加算は、後続品に変更してから3カ月間算定可能です。

在宅療養指導料は算定できていますか?

在宅療養指導料
B001 13 在宅療養指導料170点

 在宅自己注射指導管理料を算定する患者さんで医師の指示に基づき保健師、助産師又は看護師が在宅療養上必要な指導を30分以上個別に行った場合に、月1回(初月は月2回)算定できます。

 自己注射を導入する際に、看護師さんにも指導してもらうことはよくあると思いますのでもれなく算定したいですね。

算定のスケジュールの例【算定開始のタイミングに注意!】

算定のスケジュールの例

 基本的には、自己注射用の薬剤を「外来処方」した日に在宅自己注射指導管理料の算定が可能となります。

 ただし、自己注射の導入前の指導の際に院内で薬剤を使用する際には注意が必要です。

C101 在宅自己注射指導管理料(通知)

(13) 在宅自己注射指導管理料を算定している患者の外来受診時(緊急時に受診した場合を除く。)に、当該在宅自己注射指導管理に係る区分番号「G000」皮内、皮下及び筋肉内注射、区分番号「G001」静脈内注射を行った場合の費用及び当該注射に使用した当該患者が在宅自己注射を行うに当たり医師が投与を行っている特掲診療料の施設基準等の別表第九に掲げる注射薬の費用は算定できない。なお、緊急時に受診した場合の注射に係る費用を算定する場合は、診療報酬明細書の摘要欄に緊急時の受診である旨を記載すること。

診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知)令和4年3月4日保医発0304第1号別添1

 通知の解釈次第では、「院内で注射をおこない、同月に自己注射分の処方と在宅自己注射指導管理料を算定した場合」に「院内注射分の手技料(G000)と薬剤料」が査定される(保険として認められない)可能性があります。(手技料のみ査定され、薬剤料のみ保険として認められることもあります。)

 薬剤料が査定された場合には、1回あたり6-15万円分が病院からの持ち出し(病院の完全な負担)になりえるので、これだけは避けなければなりません。

 通知において、「在宅自己注射指導管理料を算定している患者」の初月の扱いは記載されておらず各審査機関で対応が分かれているのが現状です。(2022年4月現在)

 以下は、在宅自己注射指導管理料を最速で算定する際の受診と保険算定の一例です。(この例のスケジュールで導入を行った場合には、審査機関によっては外来での注射の薬剤料が査定されることもありえるので注意が必要です。)

算定のスケジュールの例
算定のスケジュールの例

<注意>

このスケジュールはあくまで1例です。薬の種類によっても算定方法が変わることがあったり、地域の審査機関によって算定が認められない場合もあります。地域のルールを確認しルールに従って算定してください

 薬剤によっても対応が異なるので、詳細は、各薬剤の製薬会社の担当者まで確認することが大切です。

なぜ地域ごとに異なるかはこちらを参考にしてください。

注意:併算定できない項目があります!

注意:併算定できない項目があります!

皮膚科特定疾患指導管理料を在宅自己注射指導管理料と同月に算定することができません。

第2章 特掲診療料
<通則>
1 第1部に規定する特定疾患療養管理料、ウイルス疾患指導料、小児特定疾患カウンセリング料、小児科療養指導料、てんかん指導料、難病外来指導管理料、皮膚科特定疾患指導管理料、慢性疼痛疾患管理料、小児悪性腫瘍患者指導管理料及び耳鼻咽喉科特定疾患指導管理料並びに第2部第2節第1款の各区分に規定する在宅療養指導管理料及び第8部精神科専門療法に掲げる心身医学療法は特に規定する場合を除き同一月に算定できない。

診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知)令和4年3月4日保医発0304第1号別添1

 「尋常性乾癬」は皮膚科特定疾患指導管理料Ⅰ、「アトピー性皮膚炎」・「じんま疹」は、皮膚科特定疾患指導管理料 Ⅱを算定していると思いますが、在宅自己注射指導管理料の算定をすると、皮膚科特定疾患指導管理料の算定はできなくなってしまいます

 もちろん、自己注射をせずに外来注射をしている場合には、在宅自己注射指導管理料は算定しないので皮膚科特定疾患指導管理料は算定可能です。

まとめ

まとめ
  • 「尋常性乾癬」・「アトピー性皮膚炎」・「特発性の慢性蕁麻疹」で自己注射を導入する場合に在宅自己注射指導管理料を算定可能
  • 導入初期加算やバイオ後続品導入加算は導入後3カ月算定可能
  • 看護師が30分以上個別に指導する場合には在宅療養指導料が算定可能
  • 皮膚科特定疾患指導管理料と在宅自己注射指導管理料は同月に算定できない

 在宅自己注射指導管理料の算定は少しややこしいですが、いかがでしたか?
 加算や在宅療養指導料は忘れがちなこともありますのでもれなく算定できるとよいですね。

他の管理料算定についてはこちらにまとめています。

コメント

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